

先週、お客様と一緒に物件の内覧に行ったんです。四条烏丸から少し外れた、路地に入ったところの小さな物件でした。
図面を見ながら担当者さんが言ったんです。「坪単価は2万円です」と。お客様はうなずいていたんですが、内覧が終わったあとに小声で聞いてきました。「坪単価って、月の賃料と同じですか?」と。
正直、よく聞かれます。坪単価と賃料の違い、そして「実際に毎月いくら払うのか」という計算が、混乱している方が多い。それは当たり前で、物件情報の書き方がバラバラだからです。
私は一級建築士・宅建士として、コトスタイルで京都・関西の店舗出店・空き家活用支援に関わってきた立場から、これまで300件以上の開業支援に携わってきました。物件情報の「坪単価」という数字が、契約後にどれだけ変わって見えるか。その現場を何度も見てきました。
この記事では、坪単価から賃料を正しく計算する方法と、管理費・消費税を含めた「実質月額コスト」の読み方を、できるだけわかりやすくお伝えします。物件を比べるとき、この記事を手元に置いておいてください。
📋 この記事でわかること
- 坪単価と賃料・月額家賃の違い
- 坪単価→月額賃料の正しい計算式と実例
- 管理費・共益費・消費税を加えた「実質月額コスト」の出し方
- 坪数×坪単価の早見表(10坪〜30坪 × 主要エリア)
- 「坪単価が安い=賃料が安い」が成立しないケース
- 居抜き物件の坪単価の正しい読み方
目次
坪単価とは何か——賃料・月額家賃との違い
坪単価の定義
坪単価とは、1坪(約3.3㎡)あたりの月額賃料のことです。物件情報に「坪単価○万円」と書いてあるのは、その物件が1坪につき毎月○万円の賃料がかかる、という意味です。
たとえば「坪単価2万円・15坪」の物件なら、月額賃料は2万円×15坪=30万円になります。
月額賃料 = 坪単価 × 坪数
例:坪単価2万円 × 15坪 = 月額賃料30万円
「坪単価」と「月額賃料」は別の数字
よくある混乱は、「坪単価=毎月払う金額」と思い込んでしまうことです。坪単価はあくまで「1坪あたりの単価」であって、毎月の支払額そのものではありません。
物件の広さ(坪数)をかけて初めて月額賃料が出てきます。広い物件ほど、坪単価が同じでも月額は高くなる。当たり前の話ですが、複数の物件を比べるとき、ここが混乱の原因になります。
「坪単価」と「坪数」の表記ルールはバラバラ
もう一つ注意が必要なのが、物件情報の「坪数」の表記方法です。同じ物件でも、「実坪(じつつぼ)」と「契約坪(けいやくつぼ)」の2種類が混在していることがあります。
実坪は実際に使える面積(壁の内側の寸法)。契約坪は壁の中心線や共用部の持ち分も含めた広さです。契約坪の方が数字が大きくなるため、同じ建物でも表記の仕方によって坪単価が変わって見えます。
ネット上の物件情報は表記ルールが統一されていません。複数の物件を坪単価で比較するときは、同じ基準の坪数かどうかを必ず確認してください。
坪単価から月額賃料を計算する方法
基本の計算式
計算式はシンプルです。
月額賃料 = 坪単価 × 坪数
逆算:坪単価 = 月額賃料 ÷ 坪数
「坪単価が書いてないけど、月額賃料と坪数は書いてある」という物件情報では、逆算して坪単価を出すことができます。月額賃料を坪数で割るだけです。
計算の実例3パターン
| 物件 | 坪単価 | 坪数 | 月額賃料 |
|---|---|---|---|
| 四条烏丸エリア・1階路面 | 3万円 | 15坪 | 45万円 |
| 西院エリア・2階 | 1.5万円 | 20坪 | 30万円 |
| 伏見エリア・1階路面 | 1万円 | 25坪 | 25万円 |
上の3つを見ると、坪単価が一番高い四条烏丸の物件が月額も一番高い。当然の結果ですが、広さが違うと話が変わってきます。西院エリアの坪単価1.5万円でも、坪数が20坪あれば月額30万円。坪単価が3倍違う四条烏丸の15坪物件と月額は15万円しか変わりません。
坪単価だけで「安い・高い」を判断せず、必ず「坪単価×坪数」の月額賃料で比べてください。
「実質月額コスト」の正しい出し方
月額賃料=毎月の支払いではない
「坪単価×坪数」で月額賃料は出ました。でも、毎月実際に払う金額はこれより必ず高くなります。理由は2つあります。
①管理費・共益費と②消費税が別途かかるからです。
管理費・共益費とは
物件情報に「賃料○万円(別途管理費○万円)」と書いてあることがあります。この管理費・共益費は、建物の共用部(廊下・エレベーター・外壁など)の維持管理費用で、借主が毎月負担するものです。
金額は物件によってまちまちですが、賃料の5〜15%程度が多い。「賃料8万円」と書いてあっても、管理費が1万円あれば実質9万円です。
消費税を忘れていませんか
テナント(事業用物件)の賃料には消費税10%がかかります。居住用の賃貸なら非課税ですが、店舗・事務所などの事業用は課税対象です。
「月額賃料30万円」の物件なら、消費税だけで毎月3万円の追加負担になります。
実質月額コストの計算式
計算式
実質月額コスト =(賃料 + 管理費・共益費)× 1.1
具体例①(賃料20万円・管理費2万円)
(20万円 + 2万円)× 1.1 = 実質24.2万円/月
具体例②(賃料30万円・管理費3万円)
(30万円 + 3万円)× 1.1 = 実質36.3万円/月
具体例③(賃料45万円・管理費4万円)
(45万円 + 4万円)× 1.1 = 実質53.9万円/月
物件を比較するときは、必ず「賃料+管理費・共益費+消費税」の合計額で比べてください。賃料だけで比べると、毎月の実際の負担が大きくズレます。
坪数×坪単価の早見表(京都主要エリア別)
月額賃料の早見表
「坪単価○万円の物件で、○坪なら月いくら?」という計算を、京都の主要エリアの坪単価目安をもとに一覧にしました。物件探しの予算感をつかむのにそのまま使えます。
| エリア(坪単価目安) | 10坪 | 15坪 | 20坪 | 30坪 |
|---|---|---|---|---|
| 四条河原町・木屋町(3万円) | 30万円 | 45万円 | 60万円 | 90万円 |
| 四条烏丸・祇園(2.5万円) | 25万円 | 37.5万円 | 50万円 | 75万円 |
| 三条・二条エリア(2万円) | 20万円 | 30万円 | 40万円 | 60万円 |
| 北山・下鴨エリア(1.8万円) | 18万円 | 27万円 | 36万円 | 54万円 |
| 西院・太秦エリア(1.5万円) | 15万円 | 22.5万円 | 30万円 | 45万円 |
| 伏見・向日市エリア(1万円) | 10万円 | 15万円 | 20万円 | 30万円 |
※上記は賃料のみ。管理費・共益費(+5〜15%)と消費税(+10%)が加算されます。実質月額コストは上記の1.15〜1.25倍で概算してください。
実質月額コスト込みの早見表(管理費10%・消費税込み)
管理費を賃料の10%、消費税10%を加えた「実質月額コスト」の目安はこちらです。
| エリア(坪単価目安) | 10坪 | 15坪 | 20坪 | 30坪 |
|---|---|---|---|---|
| 四条河原町・木屋町(3万円) | 33万円 | 49.5万円 | 66万円 | 99万円 |
| 四条烏丸・祇園(2.5万円) | 27.5万円 | 41.3万円 | 55万円 | 82.5万円 |
| 三条・二条エリア(2万円) | 22万円 | 33万円 | 44万円 | 66万円 |
| 西院・太秦エリア(1.5万円) | 16.5万円 | 24.8万円 | 33万円 | 49.5万円 |
| 伏見・向日市エリア(1万円) | 11万円 | 16.5万円 | 22万円 | 33万円 |
※管理費を賃料の10%、消費税10%として計算した概算です。実際の物件の管理費・共益費の金額は必ず確認してください。
「坪単価が安い=賃料が安い」が成立しないケース
坪数が大きければ月額は高くなる
これは当たり前に聞こえますが、実際の物件探しでは見落としやすいポイントです。
たとえば、こんな2つの物件があったとします。
| 物件 | 坪単価 | 坪数 | 月額賃料 |
|---|---|---|---|
| 物件A(四条烏丸・1階路面) | 3万円 | 10坪 | 30万円 |
| 物件B(伏見・1階路面) | 1万円 | 40坪 | 40万円 |
坪単価は物件Bの方が3分の1以下なのに、月額賃料は物件Bの方が高くなっています。広い物件を借りれば、坪単価が安くても月額は上がる。坪単価だけで物件を選ぶと、この落とし穴にはまります。
「坪単価が高いエリア」でも小さな物件なら月額を抑えられる
逆のパターンもあります。坪単価が高い四条烏丸エリアでも、8〜10坪の小さな物件なら月額20〜30万円で借りられることがあります。
「あのエリアは高すぎて無理」と諦める前に、小さめの物件を探すという選択肢もあります。10坪以下の物件は飲食店には狭く感じるかもしれませんが、物販・テイクアウト専門・ネイルサロンなど業態によっては十分に使えます。
「エリアで諦める」より「坪数を絞って予算に合わせる」という発想の転換が、物件探しの選択肢を広げます。
「坪単価が安い」物件が持つもう一つのリスク
坪単価が安い物件には、安い理由があります。上階、路地奥、築年数が古い、設備が老朽化しているなど。
特に注意が必要なのが、設備面の問題です。坪単価が安くて月額賃料が低く見えても、電気設備の更新・排水配管の整備・空調の交換など「見えない工事費用」が重なると、初期投資の総額では逆転することがあります。
コトスタイルが内覧同行をする理由の一つはここにあります。物件の賃料だけでなく、「この物件で開業するのにいくらかかるか」をトータルで見極めるためです。
居抜き物件の坪単価の読み方
居抜きの坪単価は「割高に見える」ことがある
居抜き物件——前のテナントの設備や内装がそのまま残っている物件——は、坪単価がスケルトン物件より高く設定されていることがあります。
理由は単純で、造作(設備・内装)に価値があるからです。厨房設備・エアコン・換気ダクトがすでに揃っている居抜きは、スケルトンから工事するより初期費用が大幅に下がります。その分、賃料に上乗せされているケースがある。
居抜きの「実質コスト」はトータルで判断する
居抜き物件を正しく評価するには、賃料の高さだけで判断してはいけません。
居抜き物件のトータルコスト比較の考え方
- スケルトン物件:月額賃料が安くても、設備工事費が100〜300万円かかることも
- 居抜き物件:月額賃料が高くても、設備工事費がほぼゼロになれば数年で逆転
- 比較の視点:(月額差額)×(想定営業月数)と(初期費用差額)を比べる
たとえば、月額賃料が3万円高い居抜き物件でも、スケルトンより設備工事費が150万円安ければ、50ヶ月(約4年)で回収できる計算です。4年以上その物件を使うつもりなら、居抜きの方がトータルで安くなります。
居抜きで確認すべき「坪単価に隠れた落とし穴」
居抜きだからといって、すべての設備が使えるわけではありません。私が内覧で必ず確認するポイントを挙げます。
造作の「残置物」か「造作譲渡」かを確認する
前テナントの設備を無償で使える「造作譲渡」と、撤去費用を買主が負担する「残置物」は別物。契約書で必ず確認。
設備の年数と状態
業務用エアコン・厨房機器は設置から10年以上経過していると、すぐに交換が必要になることがある。現地で年式を確認する。
前業態と自分の業態が合っているか
前がラーメン屋で次にカフェを出す場合、排気ダクトの容量が過剰で逆に改修が必要なことも。前業態の設備が自分の業態に使えるかを確認する。
月額コストから業態の採算を逆算する
家賃比率から「払える賃料の上限」を出す
物件の月額コストが出たら、次にやるべきことは「それが自分の業態で払える金額かどうか」を確認することです。
業種別の健全な家賃比率の目安はこちらです。
| 業種 | 家賃比率の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 10〜15%以下 | 原材料費・人件費が高いため家賃は低く抑える |
| カフェ・テイクアウト | 10〜20% | 客単価低め。立地依存度が高い業態 |
| 美容室・サロン | 15〜20% | 目的来店型。2〜3階でも集客可能 |
| 物販・アパレル | 10〜15% | 在庫コストもかかるため家賃圧縮が重要 |
| 整体・マッサージ | 15〜25% | 予約制。立地より口コミ・SNS集客依存 |
「払える家賃上限」の逆算表
自分が見込む月商から、業態ごとに払える家賃の上限を逆算してみてください。
| 月商の目安 | 家賃上限(10%) | 家賃上限(15%) | 家賃上限(20%) |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 10万円 | 15万円 | 20万円 |
| 150万円 | 15万円 | 22.5万円 | 30万円 |
| 200万円 | 20万円 | 30万円 | 40万円 |
| 300万円 | 30万円 | 45万円 | 60万円 |
| 500万円 | 50万円 | 75万円 | 100万円 |
「憧れのエリアに出したい」という気持ちより先に、「自分の業態で月何百万円売れるか」を冷静に計算することが、物件選びで失敗しないための最初の一歩です。
まとめ|坪単価は「入口」にすぎない
坪単価は、物件を比較するための入口の数字です。でも、そこで止まってしまうと、本当の月額コストは見えてきません。
- 月額賃料 = 坪単価 × 坪数で計算する
- 実質月額コスト =(賃料 + 管理費・共益費)× 1.1(消費税込み)
- 坪単価が安くても坪数が大きければ月額は高くなる
- 居抜き物件は坪単価が高くても、初期工事費とトータルで比較する
- 月商から家賃比率で「払える上限」を先に決めてから物件を探す
- 坪数・実坪・契約坪の表記が物件によって違うため、同じ基準で比較する
物件探しは、数字の比較作業です。でも、その数字を正しく読める人と一緒に動けるかどうかで、判断のスピードも精度も変わります。「この物件、本当に払えるのか」という不安を、一人で抱えないでほしいと思っています。
物件の坪単価・賃料についてのご相談はこちら
「この物件の実質月額コストを計算してほしい」「坪単価が適正かどうか判断してほしい」
物件情報を送っていただくだけで、コトスタイルが一緒に試算します。京都・関西エリア対応。
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