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開業の事業計画書と物件探しの関係を解説

飲食店開業の事業計画書は物件探しより先に作る|売上・席数・家賃の計算方法をプロが解説

開業の事業計画書と物件探しの関係を解説

今日はお昼から、飲食店を開業しようとしている方と一緒に物件を見て回ってきました。

居抜きを中心に5件。ひとつひとつ内覧して、感触を確かめながら歩いた午後でした。物件を見るのは好きな仕事で、どんな小さな物件でも「ここで誰かが何かを始める」という可能性が詰まってる気がして、毎回少しテンションが上がる。

事務所に戻ってお話をするなかで、作成中の事業計画書を見せていただきました。それが今日のブログを書きたくなった理由です。

事業計画書は、物件を見る「前」に作るものだと私は思っています。そのことを改めて痛感した、そんな一日でした。

📋 この記事でわかること

  • 「仮でいいから事業計画書を作る」ことが、物件探しになぜ直結するのか
  • 席数2席・客単価500円の違いが、月の売上をどう変えるか
  • 「物件を見てから計画を作る」と「計画を持って物件を見る」の決定的な差
  • 開業の悩みが具体的な課題に変わる瞬間
  • 事業計画書に最初から盛り込んでほしい「ものさし」の作り方

事業計画書を見せてもらって気づいたこと

完成度は「これから」でも、作っていたことに意味があった

見せていただいた事業計画書は、まだ作成中という段階でした。完成度はこれからという印象で、数字も「とりあえず仮置きしました」という感じの内容でした。

でも、その「仮置き」が今日の話し合いを全然違うものにしてくれたんです。

物件がまだ決まっていないため、「10坪・家賃10万円」という仮の設定で損益の計算をされていました。売上予測と販売管理費を並べて、大まかな収支のイメージを持っている状態でした。

話しながら、「あ、これも費用に入れていないですね」「この費用はどう見てますか」とやりとりをしていくうちに、販売管理費がどんどん膨らんでいったんです。計算していた売上では足りなくなる、ということが見え始めました。

もし事業計画書を何も持たないまま物件だけ見ていたら、このやりとりは起きなかった。数字があったから、具体的な話ができた。仮でも、作ってあったことがこんなに役に立つんだと感じた瞬間でした。

数字を動かしてみたら、見えてきた現実

席数2席の差が、月20万円の違いになる

「売上が足りない」とわかったとき、どうするか。ここからの話が、私にとって今日一番印象的な部分でした。

その方は最初、13席という設定で計算されていました。「じゃあ、15席にしてみたらどうなりますか」という話になって、数字を変えてみた。客単価も2,500円から3,000円に上げてみた。

たったそれだけで、月次の売上予測が約20万円変わったんです。

これは計算の結果ですが、同時に「この物件は何席取れるか」「この単価を払ってくれるお客様はどんな人か」という問いを自動的に生んでいく。数字を動かすことで、次の現場でチェックすべきことが一気に具体化されるんですよね。

「家賃の上限はこのライン」が腹落ちした瞬間

この作業を通じて、「家賃の上限はどのくらいか」という感覚が出てきました。売上の予測と費用の構造が見えてくると、「家賃がこれ以上だと、この収支は成立しない」という数字が自然に浮かび上がってくる。

これが「ものさし」です。この感覚を持って物件を見るのと、持たずに見るのでは、見え方がまるで違う。

たとえば、家賃15万円の物件を内覧したとき。「ものさし」がある人は「この家賃だと月の売上はいくら必要か」「そのためには何席・何回転・何の客単価が必要か」を無意識に計算し始める。そして「この物件のキャパシティでは、その数字は難しいかもしれない」という判断ができる。

一方、数字を持たずに見ていると、「なんかいい感じだな」「雰囲気がちょっと好きかも」という感覚が先行してしまう。それ自体は悪いことじゃないんですが、感覚だけで動くとあとから数字が追いつかなくなることがある。

「物件を見る前に計画を作る」と何が変わるのか

5件の物件を見たのに、何も感じなかった理由

今日、5件の居抜き物件を見て回りました。どれも悪くはなかった。でも、内覧中はお互いにそこまで深い話にならなかったんですよね。

でも、事務所に戻って事業計画書を広げた瞬間から、話の密度が変わった。

「あの3件目の物件、カウンターが入れにくかったですよね。席数が10を超えるのは厳しいかもしれない」「家賃が12万だったから、この計算だと少し厳しいですね」——そういう具体的な話が、次々と出てきた。

物件を見ただけでは何も感じなかったのに、数字と照らし合わせた瞬間に、それぞれの物件の「合う・合わない」が見え始めた。事業計画書は、物件を評価するためのフィルターになるんだなと、改めて思いました。

「物件が先」か「計画が先」か

開業を考えている方の多くが、「まずいい物件を探してから、事業計画を作ろう」というスタートをされます。気持ちとしてはわかる。物件を見た方が具体的にイメージが湧くし、「ここで開業する」というイメージがあった方が計画を書きやすいという感覚があると思う。

でも、私の経験上、物件が先になると、物件に計画を合わせてしまうリスクが出てきます。

気に入った物件が見つかった瞬間、人は「この物件でうまくいく計画」を無意識に作ろうとする。家賃が高くても「なんとかなる」と思ったり、席数が少なくても「回転率でカバーできる」と考えたり。

これはサッカーで言うと、監督が先に選手を選んでから、その選手に合わせた戦術を作るようなもので。理想は逆で、戦術(コンセプト)を先に決めて、それに合った選手(物件)を探す方が、結果的にチームとして機能しやすい。

計画が先、物件はその後。これが開業準備の理想の順序だと思ってます。

開業の悩みが「具体的な課題」に変わる瞬間

「なんとなく不安」が「この部分をどうするか」に変わる

開業を悩んでいる方と話をしていて、よく感じることがあります。

悩みが「なんとなく不安」「全部が心配」という状態のとき、実は問題がまだ具体化されていない。問題が具体化されていないから、どこから手をつければいいかわからなくて、漠然とした不安が続いてしまう。

でも、事業計画書の数字を一緒に見ながら話すと、「あ、この費用が問題ですね」「ここの想定が甘かったかもしれません」という形で、課題が一つひとつ具体化されていく。具体化された課題は、解決策を考えられる。

「なんとなく不安」と「この部分をどうするか」では、気持ちの重さが全然違います。後者の方が、前に進むエネルギーになりやすい。事業計画書は、不安を具体的な課題に変換するための道具でもあると思っています。

仮でいい、荒削りでいい

「事業計画書を作ろうとしているけど、何をどう書けばいいかわからなくて……」という声も、よく聞きます。

完成度は低くていい、と私はいつも言っています。今日のお客様も、まだ仮置きの数字だらけでした。でも、それがあったから具体的な話ができた。

荒削りな計画書を持って相談に来てくれる人の方が、話が深くなります。「何も決まっていない」状態より、「とりあえずこう考えてみた」という状態の方が、一緒に考えられることが格段に増える。

完璧な計画書を一人で仕上げてから相談しよう、と思っている方は、それより前の段階で来てほしいんですよね。荒削りのまま持ってきてくれた方が、お互いにとってずっといい。

事業計画書に最初から入れてほしい「ものさし」

物件探しに直結する3つの数字

事業計画書をこれから作る方に向けて、最初から入れてほしい「ものさし」をお伝えします。

物件探しに直結する3つの数字

① 家賃の上限(月売上の10%以内が目安)

月の売上目標を先に決めて、その10%以内に収まる家賃が安全ライン。これを先に決めておくと、物件を見たときに「この家賃は無理だな」という判断がすぐにできる。

② 最低必要席数

客単価×回転数×席数で月の売上が変わる。最低限必要な席数を計算しておけば、物件の広さと形状を見たときに「ここじゃ席が足りない」という判断ができる。現場で席のレイアウトをイメージするようになる。

③ 初期投資の上限

自己資金と借入の合計から、どのくらいを内装・設備に使えるか。上限を持っておくと、居抜きとスケルトンのどちらを選ぶべきかという判断基準になる。

この3つが仮でも決まっていると、物件を見るときの視点が完全に変わります。「この物件、家賃が上限オーバーだ」「席数が足りない形状だ」「居抜きの状態がいいから初期費用が抑えられる」——そういう判断が、内覧しながらできるようになる。

フィーリングは大事。でも、ものさしが先

「フィーリングも大切」という言葉で今日の話を締めくくりたいと思います。

物件を見たときの直感や「この場所に立ったときの感覚」は、確かに大切だと思ってます。建築士として現場を長く見てきて、「この空間には何かある」と感じる直感みたいなものが、設計の判断に意外と役立つことがある。

でも、フィーリングだけで動くと、あとから数字が追いつかなくなることがある。だから、ものさしを先に用意しておいて、フィーリングはその上で使う。その順序が大事だと思っています。

今日のお客様の開業は、まだ先です。でも、今日のやりとりで、次の物件探しが全然違うものになると感じました。なんとかお力になりたいと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 事業計画書はどの段階で作り始めればいいですか?

物件を探し始める前に、仮でいいので作り始めることをお勧めします。完成度は関係ありません。家賃の上限・必要席数・初期投資の上限という3つの数字だけでも仮置きしておくと、物件を見たときの判断基準が大きく変わります。荒削りな状態で相談に来ていただければ、一緒に精度を上げていくことができます。

Q. 事業計画書の書き方がわからないのですが、どうすればいいですか?

日本政策金融公庫や各金融機関のWebサイトに、事業計画書のテンプレートが公開されています。まずはそれを使って、わかる範囲で埋めてみることをお勧めします。完璧に埋める必要はなく、空欄のまま持ってきていただければ、一緒に考えることができます。

Q. 「物件が先か、計画が先か」迷っています。

計画が先をお勧めします。物件を見てから計画を作ろうとすると、気に入った物件に計画を合わせてしまうリスクが出てきます。計画(コンセプト・収支の骨格)を先に作って、それに合う物件を探す順序の方が、開業後のズレが少なくなります。

まとめ|フィーリングより先に、ものさしを持つ

今回お伝えしたことを整理しますね。

  • 仮でいいから事業計画書を作っておくことで、物件探しの話が一気に具体的になる
  • 席数2席・客単価500円の違いが、月20万円の売上差になる
  • 数字を動かすことで「次の物件でチェックすべきこと」が自動的に見えてくる
  • 計画が先、物件はその後——この順序が開業後のズレを防ぐ
  • 「漠然とした不安」は、数字と向き合うことで「具体的な課題」に変わる
  • 完璧な計画書より、荒削りな計画書を持って早めに相談に来てほしい


物件だけ見ていたときは何も感じなかったのに、数字と照らし合わせた瞬間に、その物件の可能性と課題が一気に見えてきた。今日のやりとりを振り返って、そのことをあらためて実感しています。

開業という大きな一歩を踏み出そうとしている方に、ひとつお願いがあります。「完璧な準備ができてから」ではなく、「仮でいいから数字を作って」から動き始めてほしい。そうすれば、私たちも一緒に考えやすくなるし、あなた自身の迷いも早く晴れていくと思っています。

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