「内装工事が終われば、あとはオープンするだけ!」
開業を目指している方と話していると、よくこういうイメージを持たれています。 でも実際は、工事が完了した直後の店内は”空っぽの箱”にすぎません。
そこに家具を運び込み、看板を取り付け、什器を並べて—— 初めて「お店」として息が吹き込まれる。 そのオープン直前の怒涛の数日間が、じつはいちばん段取りを間違えやすい時期なんです。
今回は、京都・祇園町北側でオープン準備を進めていた居酒屋「お酒とお料理 来春(きはる)」さんの現場を例に、家具の搬入タイミング、看板取付の段取り、そしてオープン日の決め方まで、現場担当者としてリアルに感じたことをお伝えします。
「いつ家具を発注すればいいの?」「オープン日はどう決める?」とお悩みの方に、少しでも役に立てればうれしいです。 Designer タナカです。
大きな家具が入ると、空間の印象は別物になる
来春さんの現場では、いよいよ最後の納品ラッシュを迎えました。 造りつけの家具、ゆったり座れるベンチ、トイレのドア——。 職人さんの手によって、順番に設置されていきます。

これ、毎回思うんですが、大きな家具が入った瞬間の空間の変わりようはすごい。 殺風景だった”箱”が、一瞬でお店の雰囲気を帯びます。
「ここにお客さんが座ってくれるんだな」という実感が湧いて、現場の空気も引き締まる。 図面で見ていたものが目の前に現れる、この瞬間が個人的にいちばんワクワクする場面です。
でも同時に、「ここからが本当の勝負」と毎回気持ちを入れ直す瞬間でもあります。 家具が入ってからのほうが、やることは多いから。
家具・備品の搬入は「工事完了後」が絶対ルール
ここで、開業準備中の方にぜひ知っておいてほしいことがあります。
「セールで安かったから」「早く届いてほしかったから」と、工事中の店内に家具や備品を送り込んでしまう方が、意外と多いんです。
気持ちはとてもよくわかります。 テンションが上がって、早くお店の形を見たくなる。 それは開業を目指す人なら誰でも持つ感情だと思います。
でも、工事中の店内は職人さんの現場です。 大量の段ボールが届いたら、作業スペースを奪ってしまいます。 最悪の場合、大切な家具に傷がついてしまうことも。 そして工事の進行が遅れる分、オープン日が後ろにずれていきます。
現場からのひとこと
家具や家電の搬入は「工事完了・引き渡し日」に照準を合わせて一極集中させる。 これが現場をスムーズに回す鉄則です。配送業者への手配は「引き渡し日の翌日以降」で統一してください。
搬入後の作業量は「想像の3倍」と思っておく
家具と看板が揃ってひと安心……と思いきや、ここからが体力勝負です。
次々と届く巨大な段ボールを開封して、組み立てが必要な家具と格闘して、山のような梱包材を処分する。 店内を清掃して、什器を並べて、装飾を施す。 これ、1〜2日で終わると思っている方が多いんですが、答えはノーです。
慣れない作業と圧倒的な物量に追われ、3〜4日は体力勝負の肉体労働が続きます。 開業経験のある方はみなさん「あの数日は地獄だった」と笑いながら言います。
工事契約の前の打ち合わせ段階で「家具の設置や大量の段ボール処理をコーディネートしてもらえないか」と相談しておくのも、賢い選択肢のひとつです。
看板とのれんが、ただの「箱」を「お店」に変える
家具の設置が終わると、次はお店の「顔」となる看板類の取り付けです。
来春さんでは、入り口に小さな提灯、メニューボード、そしてのれんを取り付けました。

これが取り付けられた瞬間、空間の雰囲気がガラッと変わりました。 さっきまで「工事現場」だった場所が、「お酒を飲みに行きたい場所」になる。 不思議なんですが、本当にのれん一枚でそうなるんです。

店名は「お酒とお料理 来春(きはる)」さん。 ロゴもフォントもとても可愛らしくて、私もすごく気に入っています。
看板は「お店の声の大きさ」だと私は思っています。 通りすがりのお客さんに向けて、無言で「ここにこんなお店がありますよ」と語りかける、最初の営業マン。 だからこそ、ロゴのデザインやフォント、素材の選び方が大事なんです。
看板取付で陥りやすい3つのミス
居酒屋の開業現場を担当してきて、看板取付で起きやすいトラブルを3つお伝えします。
特に「看板の発注タイミング」は見落としやすいポイントです。 工事が終わってから「そういえば看板まだだった」となると、オープンが2〜3週間遅れることも普通にあります。
オープン日は「引き渡しから最低10日後」に設定する
「家賃がもったいないから、引き渡しの3日後にオープンしよう」
気持ちはよくわかります。本当に。 家賃を払い始めたら、1日でも早くオープンしたいのは当然の感覚です。 でも、そのスケジュールは危険すぎます。
オープン直前は、ただでさえやることが山積みでパニックになりやすい時期。 そこに「発注した機材が届かない」「サイズが合わなかった」「保健所検査で指摘が出た」といった想定外が重なったら——。
徹夜で作業して、ヘトヘトの状態でオープン当日を迎えて、大切なお客さんに最高のサービスを提供できない。 そんな結末にだけはなってほしくないんです。
引き渡し後にやることリスト
引き渡しからオープンまでの間に、やらなければならないことを整理しておきます。
これを積み上げると、最低でも10日間は必要です。 余裕を持てるなら2週間あると安心です。
「この余白の時間」こそが、オープン当日に最高の笑顔でお客さんを迎えるための、いちばんの準備です。
現場担当の本音
「引き渡しから1週間後にオープン」でうまくいった現場を、私はほとんど見たことがありません。 逆に「2週間の余裕を持ったのに、それでもギリギリだった」という声は毎回聞きます。 スケジュールは必ず、多めに読んでください。
居酒屋の内装工事で「絶対に後悔しない」ためのポイント
来春さんの現場を通じて改めて感じたことを、居酒屋開業の内装という視点でまとめます。
① 「長居したくなる」照明設計
居酒屋の照明で失敗しやすいのは「明るすぎること」です。 清潔感は出ますが、長居したくなる雰囲気にはなりにくい。
演色性の高い電球色の照明を選ぶと、料理も人の顔もおいしく見えます。 来春さんでは落ち着いたトーンの照明を採用していて、それがのれんや提灯の和の雰囲気と見事にマッチしていました。
② カウンターとテーブルの「人が主役」の設計
居酒屋はひとりで来ても、グループで来ても楽しめる空間が理想です。 カウンター席は「大将に話しかけられる距離感」、テーブル席は「グループで盛り上がれる広さ」。 この両方を無理なく共存させるのが内装設計の腕の見せどころです。
人は「囲われた感じ」に安心感を覚えます。 コーナー席やボックス席を積極的に設けると、「居心地のいい定位置」ができます。
③ 素材選びは「時間が経っても味が出るもの」を選ぶ
居酒屋は、年月が経つほど「いい感じになる」内装が似合います。 無垢の木材は、使い込むほど色が変わって手になじむ。 カウンターに無垢材を使うと、お酒を置いたときの音、もたれかかったときの感触——そういう細かい体験のひとつひとつが「またここに来たい」につながっていくと、私は思っています。
安価な素材で全部揃えることもできます。でも居酒屋という業態は、「経年変化を楽しめる素材」にある程度投資したほうが、長い目で見てお店の価値になります。
「お酒とお料理 来春」さん、無事オープンへ
家具の搬入、看板の取り付け、細かい調整を経て、来春さんはいよいよオープンの準備が整いました。
「来春(きはる)」というお店の名前がとても好きです。 来たる春、という響きに、どこか待ち遠しさと温かさがある。 そんな名前のお店に、ぜひ足を運んでみてください。
場所はこちらです。
お酒とお料理 来春(きはる)
〒605-0074 京都府東山区祇園町北側 347‐143 知恩ビル1階A号室
まとめ:内装工事が終わってからが「本当のスタートダッシュ」
今回お伝えしたことを整理します。
開業直前スケジュールの3鉄則
① 家具・備品の搬入は「工事完了・引き渡し日」以降に統一する
② 看板は内装工事と並行して発注。取付の電気配線は工事中に仕込む
③ 引き渡しからオープンまで最低10日のバッファを確保する
開業は、内装工事が完了してからが本当のスタートダッシュです。 家具の納品タイミングを見極め、大量の作業を想定し、余裕を持ったスケジュールを組むこと。 これが、オープン当日に最高の笑顔でお客さんを迎えるための、いちばんシンプルな方法です。
「自分の開業スケジュールがこれで合っているか不安」「物件探しからデザイン・看板・納品まで誰かに並走してほしい」とお悩みなら、ぜひコトスタイルの開業相談をご利用ください。
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開業の段取り、一緒に整えましょう
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