

「居抜き物件、立地も家賃も申し分ないんですが……前がパン屋さんで、どうしても飲食のイメージが抜けなくて」
物件内覧に同行していると、よくこんな声を耳にします。その気持ち、すごくわかります。前の業種の痕跡——大型の作業台、木目調のフローリング、飲食店らしいガラス張りのファサード——が目に入ると、そこにおしゃれなアパレルが並ぶ映像がどうしても浮かばない。
でも10年以上の現場経験から言うと、異業種の居抜き物件こそ、コストを抑えながら理想のお店に近づける「宝の山」になる可能性を持っています。今回お話しするのは、京都・北山通沿いで進めたブティック新装工事の現場レポートです。元パン屋さんの居抜き物件を、まったく業種の異なるアパレルショップへと生まれ変わらせた約1ヶ月半の工程を、解体の判断基準と内装工事費用の考え方を交えながら解説します。
今回お話しするのは、京都・北山通沿いで進めたブティック新装工事の現場レポートです。元パン屋さんの居抜き物件を、まったく業種の異なるアパレルショップへと生まれ変わらせた約1ヶ月半のドラマを、工事の流れと費用の考え方を交えながら紐解いていきます。
「前の業種のイメージが残ってしまわないか」「居抜き物件でどこまで解体が必要なのか」「内装工事の費用はどれくらいかかるのか」——そんな疑問をお持ちの方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
📋 この記事でわかること
- 異業種の居抜き物件でも「まったく新しいお店」に生まれ変わらせる考え方
- 居抜きで解体すべき場所・残してよい場所の判断基準
- 京都の店舗内装工事費用の目安と費用対効果の考え方
- モルタル仕上げ・ファサード塗装など「少額で空間を変える仕掛け」
- 北山ブティック着工〜完成までの現場レポート写真つき
目次
「前の業種のイメージが残る」という不安の正体
異業種の居抜きは「宝の山」になる可能性を持っている
物件内覧に同行していると、よくこんな声を耳にします。
「立地も家賃もすごくいいんですが……前がパン屋さんだったみたいで、なんか飲食店のイメージが抜けない気がして」
この不安、すごくよくわかります。前の業種の痕跡——大型の厨房設備、油の匂いがしそうなタイル、生活感のある素材——が目に入ると、そこにおしゃれなアパレルが並ぶ映像がどうしても浮かばない。
でも私の経験から言うと、異業種の居抜き物件こそ、コストを抑えて理想のお店に近づける「宝の山」になる可能性を持っています。
問題は「どこを残し、どこを変えるか」の判断です。この判断を間違えると、費用が余計にかかったり、「前の業種感」が消えないままになったりします。逆に正しく判断できれば、スケルトンから工事するより大幅にコストを抑えながら、まったく新しい顔のお店を作ることができます。
「イメージ」は視覚と素材が作っている
前の業種のイメージが残る原因は、大きく2つあります。
ひとつは「視覚的なもの」——前のお店の設備、内装の色、素材感、什器の配置。もうひとつは「非視覚的なもの」——匂い、音、窓から入る光の角度など。
視覚的なものは工事で変えられます。非視覚的なものも、換気の設計や素材の選択で改善できるものがほとんどです。
「前の業種のイメージが抜けない」という不安は、正しい解体・設計・素材選択によって、ほぼ必ず解消できます。それが、私たちが何百件もの現場で学んできたことです。
居抜きで「解体すべき場所」「残してよい場所」の判断基準
「見える部分」は変える。「見えない部分」は残す
居抜き工事における解体の基本は、シンプルです。
お客様が目にする場所——床、壁、天井の仕上げ、什器、照明、看板——はゼロベースで考え直す。お客様が目にしない場所——配管・電気の幹線・構造体——は活かせるだけ活かす。
この原則に従って費用を配分することで、「ガラッと変わった感」と「コストの最適化」が同時に実現します。
居抜き工事における解体の判断基準
✅ 解体を優先すべき場所
床仕上げ(前の業種の材料や色が残る場合)/外部ガラス・ファサード素材(店の顔に直結)/前業種特有の大型設備・什器(飲食の場合は大型厨房など)/天井の不要な吊り下げ設備・配線
💡 状況によって判断する場所
壁の仕上げ(塗装・クロスの張り替えで済む場合はそのまま活用可)/天井ボード(傷みが少ない場合は下地を残して仕上げだけ変更)/間仕切り(新業態の動線・ゾーニングに支障がない場合は残す判断も)
🔒 基本的に残すべき場所
給排水の幹線(特に水回りが充実している元飲食物件は大きなメリット)/電気の幹線・分電盤(容量確認は必要)/構造体(躯体、鉄骨、RC)
元パン屋さんの「水回り」は最大のメリット
今回の北山ブティックの物件は、元パン屋さんです。飲食・製造業種の物件には、一般的に給排水のインフラがしっかり整っています。
スケルトン状態から新たに水道管を引き込み、トイレや手洗い場を作ろうとすると、設備工事だけで数十万〜場合によっては100万円単位のコストがかかります。しかし元飲食・製造系の物件であれば、そのインフラがすでに整っているため、設備費用の大部分をカットできます。
「元パン屋さんでどうしても飲食っぽい」と感じていた部分——外部のガラスや床のフローリング——は思い切って解体・撤去します。でも給排水の幹線は活かす。これが、コストを抑えながら「別のお店に見せる」居抜きリノベーションの基本戦略です。
【現場レポート①】着工〜引き算の解体工事
「引き算」から始まるお店づくり
北山通沿いの1階テナント。着工の日、現場に入ると元パン屋さんの設備が残っていました。大型の作業台、木目調のフローリング、前の時代を思わせるガラス張りのファサード。
お店づくりは「足し算」だと思われがちですが、実は「引き算」から始まります。余分なものを取り除いて、空間を一度リセットする。それが最初の仕事です。

まず手をつけたのは外部のガラスと、床のフローリングです。
フローリングは元の素材の色や傷み方が「前の業種感」を残す大きな原因のひとつです。どれほど上に新しい素材を施工しても、下地の状態が悪ければ仕上がりに影響します。思い切って撤去し、ゼロから床を設計する方が、長い目で見ると品質も費用対効果も上がります。

外部ガラスの解体も同様です。道を歩く人に最初に目が届くのがファサード。前の業種のガラスや看板サインが残っていると、どれほど内装をきれいに仕上げても「ただオーナーが変わっただけ」という印象を与えてしまいます。
「まず引き算」——これが異業種の居抜きをまったく別のお店に生まれ変わらせる、最初の鉄則です。
【現場レポート②】木工事終盤——天井配線の整理という地道な仕事
見えない部分に手を抜かないこと
解体が終わると、いよいよ木工事が始まります。壁の下地を作り、間仕切りを設置し、空間の骨格が少しずつ姿を現してきます。
北山の現場で、木工事が終盤に差しかかった頃——職人たちが格闘していたのが、天井の電気配線の整理でした。

元パン屋さんの時代に使われていた無数の配線が、天井からぶら下がっています。照明の配線、換気設備の配線、冷蔵設備の配線……業種が変わっても、配線はそのまま残ることが多いんです。
これをそのままにしてしまうと、どれほどセンスの良い照明器具を選んでも、天井がごちゃついて見えてしまいます。シンプルでクリーンな空間を目指しているのに、天井だけが「工場のバックヤード」みたいになってしまう。
「見えない仕事」が仕上がりの差を生む
配線の整理は、地味で泥臭い作業です。職人が一本一本、必要な配線と不要な配線を確認しながら整理していく。完成したお店からは見えない場所の話です。
でも、この見えない部分への丁寧な仕事こそが、仕上がりの差を生みます。

外部の様子も少しずつ全体像が見えてきました。内側から空間の骨格が作られると同時に、外から見た姿も変わっていく。現場でこのタイミングに立ち会うのが、私はいつも好きです。まだ未完成なのに、もう「何かになろうとしている空気」が漂っている。
「お店をつくるとき、私がまず考えるのは『ここを訪れる人がどんな表情をするか』です。ショーウィンドウを覗いたとき、扉を開けたとき、商品を手に取ったとき——その瞬間瞬間の感情の動きを、天井の配線一本まで考えながら設計していく。それがインテリアデザインの仕事だと思っています」
【現場レポート③】ラストスパート——モルタルとファサードが空間を決める
レジ台にモルタルを塗る——仕上げの「主役」を作る
木工事が終わり、電気・設備工事が進むと、いよいよ仕上げの段階に入ります。北山ブティックの現場で、ラストスパートで私が特に楽しみにしていたのが、レジ台の仕上げでした。

レジ台はモルタルを塗って仕上げていきます。既製品のカウンターをポンと置くのではなく、左官職人が手仕事でモルタルを施工する。
モルタル仕上げの良さは、「人の手の温度」が素材に宿ることです。均一に見えて、よく見ると職人の手跡がある。そのわずかな不均一さが、空間に「生きている感じ」をもたらします。
お客様がレジに立つとき、目線に入るのはこのカウンターです。最初に「触りたい」と思わせる素材感があるかどうか。それが、空間全体の印象を決める「主役」になります。
ファサードの塗装——お店の「顔」が決まる瞬間
雨が少し心配でしたが、ファサードと入口建具の塗装も無事に完了しました。

建物の構造自体は変わっていない。でも、外壁と建具のトーンが変わるだけで、道を歩く人の目に「新しいお店ができた」と映る。それがファサードデザインの力です。
入口建具の塗りが終わった瞬間、現場全体の空気が変わります。「ただの工事中の建物」から「お店が生まれようとしている場所」へ。私がこの仕事を続けている理由のひとつが、この瞬間の感覚です。
ファサードは「お店の声の大きさ」です。自分のお店らしさを、道行く人にどう伝えるか。その答えが外壁と建具に凝縮されています。
京都の店舗内装工事費用の目安
「居抜き=安い」は半分正しい
居抜き物件で開業する最大のメリットは、内装工事費用を抑えられることです。でも、「居抜きだから安く済む」という思い込みは、時に危険です。
今回の北山ブティックのように、元の業種と新しい業種がまったく異なる場合、思い切った解体・撤去が必要です。解体費用がかかる分、費用はスケルトンと居抜きの中間くらいになることも珍しくありません。
重要なのは「トータルの費用」より「費用の配分」です。どこを削り、どこにお金をかけるか。この優先順位の設計が、最終的な仕上がりのクオリティを左右します。
京都の店舗内装工事費用の目安(参考)
居抜き物件(軽リフォーム)
既存内装を活かしつつ、クロス・照明・サイン等の仕上げ工事が中心。坪単価5〜20万円程度。
居抜き物件(異業種フルリノベ)
今回の北山ブティックのような、異業種居抜きを全面改装するケース。解体費用が加わり坪単価20〜40万円程度になることも。業態・規模によって大きく異なる。
スケルトン(新規工事)
電気・給排水・内装をすべて新設。アパレルや飲食で坪単価30〜60万円以上になることも。設備の充実度によって幅が大きい。
「費用の配分」で変わること
コトスタイルが300件以上の店舗づくりで実感していることがあります。それは、「どこにお金をかけるか」の判断が、仕上がりのクオリティを決める、ということです。
たとえば今回の北山ブティック。給排水インフラを活かすことで設備費用を大幅に抑えた分、お客様が必ず目にするレジ台・床・ファサードに費用を集中させました。
「インフラで節約して、見える部分に投資する」——これが、費用対効果の高い内装工事の基本的な考え方です。
どこを節約してどこに投資するか。この判断は、実際に物件を見て、業態を理解した上でなければ正確にできません。だから私たちは物件内覧の段階から同行し、「残すべきもの」と「変えるべきもの」を一緒に整理することを大切にしています。
まとめ|「不安」を「ワクワク」に変えるために
古い床が剥がされ、無数の配線が整理され、モルタルが塗られ、ファサードの色が変わる。約1ヶ月半のあいだ、北山通沿いの小さなテナントで起きていたことです。
完成したピカピカのお店も素晴らしい。でも、この泥臭く積み重ねていくプロセスそのものに、お店の「愛着」は宿ると私は思っています。
異業種の居抜き物件に対して「不安」を感じるのは当然のことです。でもその不安は、正しい判断と正しい工事の設計によって、必ず「ワクワク」に変えることができます。
- 「前の業種感」は視覚と素材で必ず変えられる
- 残すべきインフラを見極めることで、費用を大幅に抑えられる
- 「見えない部分の丁寧さ」が仕上がりのクオリティを左右する
- 費用は「どこに集中させるか」の配分で効果が変わる
「気になる物件があるけれど、前の業種が違いすぎて踏み込めない」「内装工事の費用感がまったくわからない」——そういうお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度コトスタイルにご相談ください。
京都での店舗内装・居抜きリノベのご相談はこちら
「物件を見てほしい」「内装工事の費用感を聞きたい」「異業種の居抜きで開業できるか判断してほしい」——物件内覧の同行から設計・施工まで、コトスタイルがワンストップでお手伝いします。京都・関西エリア300件以上の実績をもとに、具体的なご提案をいたします。
📎 あわせてご覧ください
※ この記事は2024年4月に公開した「北山×ブティック」工事レポート3本(着工編・木工事編・ラストスパート編)を元に、2026年6月に統合・幅加筆・修正したものです。







