「いつかお店を持ちたいんですよね」って言葉、私、年間で何十回聞くかわからへんくらい聞きます。
相談に来てくれる方だけじゃなくて、飲み会の席とか、子どもの学校の父母会とか、なんかそういう場で打ち明けてくれる人が多くて。「でも、まだ具体的には何も……」って続くのがお決まりのパターンで。
その「まだ」って言葉が、何年も続いてる人がいる。5年前も同じことを言ってた、って人を何人も知ってます。
別に急かしたいわけじゃないし、タイミングってあると思う。でも一方で、「なんで動けないんやろ」って自分でも薄々わかってて、でも向き合うのが怖くて止まってる、っていうケースが多いんちゃうかな、って。
この記事は、開業という言葉の前で止まっている人に向けて書きます。「何から始めるか」より前の、「なんで自分はお店を持ちたいのか」という、一番大事な問いに向き合うための話です。
📋 この記事でわかること
- 「立派な夢がない」と感じている人ほど、実は開業に向いている理由
- 「わがまま」や「不満」を、お客様への価値に変換する考え方
- 「動機」と「目的」の違いが、開業の成否をどう分けるか
- 今日から5分でできる「開業の種を見つける」ノート術
- コンセプトが決まらないまま動いてしまう人が陥る罠
「いつかお店を」と思い続ける人の、本当の悩みとは
「やりたいことはある。でも、ビジネスになる自信がない」
開業相談でいちばん多く聞く言葉が、これです。
「やりたいことはある。でも、ビジネスになるかどうかわからない」「お金のことを考えると不安で」「自分みたいな人間に、経営なんてできるのかな」——。
正直に言うと、私も最初はそうでした。コトスタイルを立ち上げた当初、資金ショートを経験したことがある。お客さんには迷惑をかけなかったけど、自分の中では「終わりかも」って思った瞬間があった。そういう怖さは、人ごとじゃないんですよ。
だから、「自信がない」って言葉には、素直に「そうですよね」って思う。むしろ最初から自信満々な人の方が、現場では危なかったりもする。
「立派な夢がない」は、むしろ誠実なスタートかもしれへん
「世の中を変えたい」「地域に貢献したい」。開業セミナーとかビジネス本には、そういう言葉が踊ってることが多い。
でも正直、最初からそんなに立派なことを言える人は、ほんの一握りです。コトスタイルに来てくれる方の多くは、もっと素朴な動機から動いていて。
- 「満員電車に、もう乗りたくない」
- 「自分のペースで仕事がしたい」
- 「好きなことだけに囲まれて生きたい」
- 「上司の顔色を窺わなくていい場所を作りたい」
こういう「エゴ」が出発点の人が、意外と長く続けてる。理由はシンプルで、しんどいときに「なんでやってんやろ」って思ったとき、「自分がやりたかったから」という強い動機が、支えになるんですよね。
立派な言葉で着飾った動機より、泥臭くても本物の動機の方が、長持ちする。そう思ってます。
開業のきっかけは「わがまま」でいい、という話
「自己中心的な理由で独立するのは甘い」は本当か
「こんなわがままな理由で開業するのは甘いかな」って自分を責める人、めちゃくちゃ多い。
でも、ちょっと待ってほしくて。
そもそも「わがまま」って何ですか、って話なんですよ。自分がしたくないことをしなくていい環境を作りたい、自分が大切にしたいものを守りながら働きたい——これ、別に誰かを傷つけてるわけじゃないですよね。
自分の欲求に素直になることと、お客様に迷惑をかけることは、全然別の話です。
むしろ、自分の欲求をちゃんと理解してないまま開業する方が、軸がブレて怖い。「なんとなくカフェが好きだから」「なんとなく料理が得意だから」——そういう「なんとなく」の方が、しんどくなったときに続かなくなるケースが多い。
「強いエゴ」が、挫折しそうなときの踏ん張り力になる
建築の工事現場で、何度か「もうやめたい」って思う瞬間がある。計画通りに進まないとき、予算が膨らんだとき、お客さんとの認識がズレたとき——。
そういうときに踏ん張れるのって、「使命感」とか「プロ意識」みたいなキレイな言葉より、もっと個人的な「これだけは絶対に守りたい」って気持ちだったりするんですよ。
サッカーで言うたら、チームのために頑張れる選手ほど、実は「自分がうまくなりたい」っていう個人的な欲求が強い。きれいごとより、本音の方が人を動かす。
だから、ノートに「今の仕事で嫌なこと」を書き出してみてほしい。「給料が低い」「休みが取れない」「自分のやり方ができない」——どんなに俗な内容でも全部書く。それが、あなたの開業の「本当の燃料」になるかもしれへんから。
「不満」を「お客様への価値」に変換する考え方
ネガティブな感情を「反面教師」にする
自分のエゴや不満を正直に書き出したら、次のステップに進みます。ここからが、個人的なわがままをビジネスの種に変えていく、一番面白い作業です。
たとえば、美容師やセラピストとして働いている人が、今の職場にこんな不満を持ってたとして。
「毎日ノルマに追われて、流れ作業みたいに接客するのが苦痛やわ。本当はもっと、一人のお客さんにゆっくり向き合いたいのに」
この不満、すごく正直な感情だと思う。でも、この感情そのものはビジネスにはならない。大事なのは、この後の「変換」の作業です。
現状への不満を「反面教師」にする。自分が嫌だと感じている「粗悪なサービス」「利益だけを追う空気」を、逆側から設計してやればいいんです。
「だからこそ」という言葉が、コンセプトになる
先ほどの不満に、「だからこそ」という言葉を繋げてみてください。
変換前(動機)
「流れ作業の接客が嫌だ。一人ひとりにゆっくり向き合いたい」
変換後(目的=お客様への価値)
「だからこそ、一人ひとりにたっぷり時間をかけて、本当の意味でリラックスできる上質なサロンを作りたい」
どうでしょう。単なる個人の不満が、立派なコンセプトに変わりましたよね。
エゴイズムからスタートしても、最終的に「お客様の役に立つ形」に変換できれば、それは立派なビジネスとして成り立ちます。
「だからこそ」という言葉は、魔法の接続詞だと思ってます。自分の動機とお客様への提供価値を、スムーズにつなげてくれる。コンセプトに悩んでいる人は、まずこの変換をやってみてほしい。
「動機」と「目的」の違いが、開業の成否を分ける
ここで少し立ち止まって、大事な話をさせてください。
「動機」と「目的」は別物です。混同すると、開業後に苦しくなる。
「好きなことで生きていきたい」は動機です。それだけではビジネスにならない。「好きなことを通じて、誰かの何を解決するか」まで考えて初めて、目的になる。
動機と目的の両方が揃ったとき、お店は「自分のためであり、お客様のためでもある」という理想の形になります。この変換ができていないまま開業してしまうと、「なんのためにやってるんやろ」という虚しさが出てくることがある。
あなたのお店を待っている人が、必ずいる
あなたが感じている「不満」は、お客様も感じている
「自分がやりたいだけのお店って、独りよがりにならないかな」という不安、めちゃくちゃよくわかります。
でも、ちょっと考えてみてほしいんですよ。
現場で働いているあなたが「もっとこうすればいいのに」「ここがおかしい」と感じている不満って、実はお客様も同じように感じていることが多いんです。
- 「いつも待たされてバタバタしてるな、このお店」
- 「もっとゆっくり話を聞いてほしかった」
- 「こっちの要望を聞いてくれる人がいればなぁ」
お客様はそれを言語化できてないだけで、心のどこかでずっと感じてる。あなたの不満が、そのまま「こんなお店があればいいのに」というお客様の声と重なることが、実はとても多い。
自分の問題意識が深いほど、解決策もリアルになる。それが、競合に真似されにくいお店の強さになります。
「誰が来てくれるお店か」を最初に決めると、迷いが消える
コンセプトが決まらないまま開業してしまう人の多くが、「ターゲット」を後回しにしています。
「誰でも来てほしい」「幅広い層に」——これ、一見よさそうに見えるけど、実は何も決まってないのと同じです。
工事現場で言うと、設計図がないまま基礎工事を始めるようなもので。「あとから考えよう」が、後になって大きな問題を生む。
自分の不満と「だからこそ」の目的が決まったら、次に「それを一番喜んでくれるのは誰か」を具体的に考えてみてほしい。
ターゲットを具体化する3つの問い
- その人は今、どんな不満・不便を感じているか?
- その人は、どんな言葉でお店を探しているか?(検索キーワードを想像する)
- その人が「また来たい」と思う瞬間は、どんな体験のときか?
これが答えられるようになったとき、コンセプトはかなり具体的になってます。逆に言うと、この問いに答えられないまま物件を探し始めると、後で必ずブレが出てくる。
「本音の深掘り」を今日から始める方法
スマホのメモ帳から始める、5分のノート術
「難しそうだな」って思った人、大丈夫です。今日から5分でできることがあります。
スマホのメモ帳を開いて、以下の3つを書いてみてください。完成度は関係ない。箇条書きでも、走り書きでも全然いい。
【開業の種を見つける3つの問い】
①「今の仕事で、絶対にやりたくないこと」を全部書く
(例:ノルマ、残業、上司への報告、流れ作業の接客、クレーム処理……なんでも)
②それぞれに「だからこそ、自分のお店では〇〇にしたい」を書く
(①で出てきた「嫌なこと」を反転させるイメージで)
③「そのお店で一番喜ぶのは、どんな人か」を書く
(年齢・職業・ライフスタイル・悩みなど、思い浮かぶだけ具体的に)
これだけです。たった3つ。でも、これができている人とできていない人では、開業相談に来たときの話の深さが全然違う。
私はいつも、最初の相談で「なんで開業したいんですか」って聞くんですが、この問いに「実は……」って少し照れながらも具体的に答えてくれる人は、ほぼ全員が開業まで辿り着いてます。逆に「なんとなく自由に働きたくて」で止まる人は、もう少し時間がかかることが多い。
コンセプトが決まらないまま動いてしまう罠
「本音がまだ整理できていないんやけど、とりあえず物件を見に行ってもいいですか」という質問も、よく受けます。
答えは、「行くのはいいけど、気に入っても契約しないでください」です。
物件って、いいものを見てしまったら欲しくなるんですよ。場所も広さも家賃も条件がぴったりで、「逃したら後悔する」と思った瞬間に冷静な判断が難しくなる。
コンセプトが決まる前に物件を決めると、「物件に合わせたコンセプト」になってしまう。本来は逆で、コンセプトに合う物件を探すのが正しい順序です。
だから、まずは「何のためのお店か」を固めること。それが先。物件はその後です。
開業を進める正しい順序(コトスタイル流)
- 動機の言語化:今の不満・欲求を正直に書き出す
- コンセプトへの変換:「だからこそ」でお客様への価値に置き換える
- ターゲットの具体化:誰が一番喜んでくれるかを考える
- 事業計画・資金計画:数字に落とし込む
- 物件探し:コンセプトに合う立地・広さ・構造を探す
- 設計・施工・開業:コンセプトを空間として具現化する
「4番と5番は同時進行でもいいですか」はOKです。でも、1〜3番が曖昧なまま4番以降に進むのは、リスクが高い。最初の3ステップが、その後の全部の土台になるから。
よくある質問(FAQ)
Q. 「やりたいことはあるけど、ビジネスになるか自信がない」という状態です。どうすれば自信がつきますか?
最初から自信がつくことはほぼないと思います。むしろ「自信がついてから動こう」は危険で、動きながら自信がついてくるのが現実です。ただ、「なぜやるのか(動機)」と「誰のために何を提供するか(目的)」が言語化できていると、不安の種類が変わります。漠然とした「全部が不安」から「この部分をどうするか」という具体的な課題に変わって、一つずつ解決できるようになります。
Q. 「流れ作業の接客が嫌だ」という不満は具体的すぎますか?
むしろ具体的であればあるほど良いです。「なんとなく今の仕事が嫌」より、「この部分が、こういう理由で嫌だ」の方が、コンセプトに変換しやすい。不満の解像度が高いほど、お店のコンセプトも具体的になります。
Q. 開業の動機が「お金を稼ぎたいから」というのは不純ですか?
全然不純じゃないと思ってます。生活があって初めてお店が続けられるわけで、収益を考えることは当然のことです。ただ、「お金を稼ぐ手段」としてのお店を作る場合、どうやって稼ぐかの設計が必要になります。「誰から、何を通じて、どのくらい受け取るか」の設計が甘いと、好きなことをしているのにお金が続かない、という状況になります。お金の動機は大切。でも「誰の何を解決するか」とセットで考えてほしいです。
Q. コンセプトが固まる前に、物件を見に行ってもいいですか?
見るだけならOKです。でも「良い物件に出会っても契約しない」という意志が必要です。良い物件を見てしまうと感情が動いて、コンセプトより物件を優先したくなる。コンセプトに合った物件を探すのが正しい順序で、物件に合わせてコンセプトを作ると、後から必ずズレが出てきます。
まとめ|「いつか」を「今」に変えるために
今回お伝えしたことを整理しますね。
- 開業のきっかけは「わがまま」や「不満」で十分。泥臭い動機の方が、長く続く燃料になる
- 個人的なエゴは、「だからこそ」という言葉でお客様への価値に変換できる
- 「動機(なぜやるか)」と「目的(何を提供するか)」の両方が揃ったとき、お店のコンセプトが生まれる
- ターゲットが具体的になるほど、コンセプトはブレなくなる
- 物件より先にコンセプト。順序を守ることで、後からの修正が減る
「いつかお店を持ちたい」という言葉には、本当にいろんな感情が混ざってると思うんですよ。夢もあれば、不安もある。ワクワクもあれば、「自分には無理かも」っていう小さな声もある。
そのどれも正直な気持ちで、そのどれも大事にしてほしい。きれいごとだけで前に進もうとすると、しんどくなったときに足が止まる。本音から始めた人の方が、結果的に遠くまで歩けることが多いと、300件以上の開業を見てきて感じてます。
もし「自分の不満をどうビジネスに変えればいいかわからない」「アイデアはあるけど、一度壁打ちがしたい」と思ったら、ぜひ一度相談に来てください。答えを押しつけるつもりはなくて、一緒に考えたいんです。
あなたの「いつか」を、一緒に考えさせてください
「本音がまだ整理できていない」「構想だけ聞いてほしい」——そんな段階でも大歓迎です。
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