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【後編|3月商戦の読み方】売上を取りこぼさない導線設計|単価と回転を守る空間戦略

売上を逃している場所はここだ|最初に直すべき“導線の盲点”

どこから手を付けるべきか、と聞かれたら、僕はまず売場や導線の話をします。販促より先に、取り逃がしている場所を決めた方が早いからです。言い方を変えると、店の中で“買う理由が消えている地点”を先に潰す。

実際こういう相談が多いです。「施策は考えたんですけど、どれからやればいいですか」。ここで手順を間違えると、全部が中途半端になります。だから僕は、施策を並べる前に、入口から会計までを一緒に歩くようにしています。ここは盲点になりやすいところで。経営者は店の中を知りすぎていて、お客さんが迷っているポイントに気づきにくい。自分にとって当たり前の導線が、お客さんにとっては初見の迷路になっていることがあります。3月は情報が多い月です。お客さんの頭の中は、送別、引越し、花見、値上げ、WBCでいっぱいです。そんな状態で、店の中の情報まで複雑だと、買う理由が薄れる。だから“分かりやすさ”の価値が上がります。

店舗デザインの仕事では、見栄えより先に「一歩目で理解できるか」を見ます。どんな商品が主役なのか。今月は何を推しているのか。どこで止まってもらいたいのか。これが曖昧だと、どんな販促も効きにくい。

焼肉店をやっていた頃、僕はメニューやキャンペーンを増やすことで勝とうとしていました。でも、増やすほど迷わせる。結果、客単価が落ちる。今なら、増やすのではなく、主役を絞って導線に置きます。取り逃がす場所を決めると、やることが急に減ります。例えば、入口で止めたいのか、会計前で追加を取りたいのか、店外で買わせたいのか。どこで勝つかを決めるだけで、WBCも花見も値上げ前も、新生活も、設計の方向が揃ってきます。

ここからは、4テーマをそれぞれ“導線上のどこで回収するか”という視点で、具体策に落としていきます。

WBC対策で失敗する店・伸びる店の差|カギは「受け取り設計」だった

WBC対策というと、観戦セットやオードブルを作る話になりがちです。もちろん商品は大事です。ただ、今年の勝負所は商品そのものより、受け取りの設計に寄る気がしています。家で観る人が増えるほど、買い方のストレスが売上を左右します。

実際こういう相談が多いです。「観戦セットを作ったのに、あまり出ませんでした」。この時、メニューの中身を疑う前に、買うまでの流れを疑った方がいいことがあります。お客さんは“欲しい”だけでは動かない。“簡単に買える”が揃って初めて動きます。このあたり、意外と見落とされがちです。店の中に入ってもらう前提で設計すると、観戦需要は取りこぼしやすい。試合の日は外に出たくない人が増えるので、入店の心理ハードルが上がる。だったら、入店しなくても買える導線が必要になります。

僕が提案することが多いのは、ファサード付近にテイクアウトの“受け渡し点”を作ることです。ワゴンでも、小さなカウンターでもいい。大事なのは、店内オペレーションと分けることです。中の席を回しながら外の受け渡しをすると、どちらも崩れます。この時、商品設計も空間とセットで考えます。観戦用のセットは、豪華にするより“使い方が分かる”方が強い。何人前で、何分で食べ切れて、どのタイミングに合うのか。試合開始前に食べるのか、途中でつまむのか、延長まで想定するのか。ここまで言語化すると、売り場の説明も揃います。

箇条書きにすると単純で、WBC需要に向けて最低限整えたいのは次の4点です。

  • 予約の入口を一つにする(電話かWEBかDMかを迷わせない)
  • 受け渡し場所を固定する(店内動線とぶつけない)
  • 商品名を用途で決める(観戦、延長、家飲みなど)
  • 告知は時間帯で出す(帰宅前に目に入るタイミングを狙う)

焼肉店をやっていた頃、僕は予約導線を複数にしてしまって、当日オペレーションが崩れたことがあります。電話とDMと予約サイトがバラバラで、確認に追われる。結果、提供が遅れてクレームになる。今なら、導線を一つに絞り、受け渡し点を先に作ります。

WBCの売上は、試合の盛り上がりに乗るというより、生活の中の“面倒くささ”を減らすことで取れる部分が大きい。そう考えると、店舗設計の仕事でやっている「迷わせない」「詰まらせない」が、そのまま売上対策になる気がします。

花見で安売りしない店の共通点|単価を守る“見せ方”戦略

花見需要は、商品開発に時間をかけたくなります。でも、短期戦の3月は、メニューの作り込みより見え方の調整が効きやすい。近場の花見は特に、衝動と気分で決まる割合が高いからです。実際こういう相談が多いです。「花見向けに新商品を作る余裕がなくて」。余裕がない時ほど、空間の調整から入るのが現実的です。既存商品でも、見せ方を変えるだけで“花見向け”になります。

ここ、読み違えが多いです。花見=安売り、にしてしまうと単価は上がりません。今の花見は、遠出しない分だけ“少し良いもの”に財布が動きやすい。だから、上げるべきは値段ではなく、納得感です。納得感を作るのは、説明と視覚です。例えば、パッケージの色味、POPの言葉、照明の色温度。ピンクやオレンジを差すだけで、春のスイッチが入ることがあります。これは感覚の話に見えて、購買心理の話です。

飲食なら「手ぶらで花見」という用途に寄せる。物販なら「桜の近くに持っていきたくなる」形に寄せる。ここで重要なのは、用途が一文で伝わることです。説明が長いと、店前で立ち止まってくれない。僕が現場でよくやるのは、売場の中に“春の塊”を作ることです。散らすと弱い。まとめると強い。花見需要は、探して来るというより、見つけて買う需要なので、まとめて視界に入れる方が取りやすい。

焼肉店時代、花見需要を取りに行って単価を落とした年があります。薄利の花見弁当を出して、数は出たけど利益が残らない。今なら、安くする代わりに、用途を絞って単価を守ります。例えば「二人で昼花見にちょうどいい」と明記し、内容と見え方を合わせる。

花見対策は、売場を春仕様に“編集”する作業だと思っています。商品を作る前に、春の気分を店の中に先に作る。その上で、少しだけ単価の高い提案を置く。これが、プチ贅沢の財布を開かせる一番現実的な順番です。

値上げ前×新生活は混ぜるな危険|売場を分けないと失速する理由

値上げ前需要と新生活需要は、どちらも3月に動きます。ただ、性質が違います。値上げ前は“今買う理由”で動く。新生活は“これから使う自分”で動く。似ているようで、刺さる言葉も、買う速度も違います。実際こういう相談が多いです。「値上げ前を打ち出しつつ、新生活も取りたい」。気持ちは分かります。でも、同じ売場で同時にやると、メッセージが混ざって弱くなることがある。だから“同時にやる”より“同じ導線で順番に当てる”が現実的です。ここ、読み違えが多いです。店内の奥に値上げ前商品を置くと、そもそも気づかれない。逆に入口に新生活を置きすぎると、常連が入りづらくなる。つまり、どちらも正しいけれど、配置を間違えると逆効果になります。

値上げ前需要は、目に入った瞬間に動く需要です。だから、入口から会計までの“メインストリート”に置くのが基本になります。アイランド陳列や山積みは、安っぽさではなく活気を作る装置です。お得感は、見え方で決まる部分が大きい。一方で、新生活需要は比較検討が入りやすい。だから、落ち着いて読める場所が必要です。商品説明が必要なら、立ち止まれるスペースを確保する。棚の前に人が溜まっても、導線が詰まらないようにする。ここは店舗設計の領域です。

店が小さい場合は、物理的に分けられないこともあります。その時は、時間で分けます。

2月後半から3月上旬は新生活を強める。
3月中旬は値上げ前を強める。
3月後半は花見と観戦を強める。

こういう“時間差”の設計で、売場のメッセージを整えます。

焼肉店を閉めた後、判断を振り返って分かったのは、短期の売上を追うほど、店の中の意思が散らかりやすいということでした。値上げ前で売ろうとすると、安売りの空気が店に残る。新生活で取りに行くと、説明の手間が増える。両方を無理に一つにすると、スタッフが疲れて、結果として接客の質が落ちる。ここは、経営判断として切り分けが必要だと思います。

値上げ前と新生活前倒しは、どちらも需要の波が早い。だから、売場を作ってから考えるのでは遅い。需要の読みを先に立てて、空間をその読みの形に合わせる。この順番でやると、3月の疲れ方が変わります。

3月施策を失敗させない実行ルール|現場が回る判断基準と手順設計

具体策を並べても、実行できなければ意味がありません。3月は忙しいので、実行は“軽く回る設計”にしておく必要があります。頑張る前提の施策は、どこかで折れます。実際こういう相談が多いです。「やることが多すぎて、結局どれも中途半端になりそう」。これは正直、普通に起きます。だから、最初に“やらないこと”を決めるのが重要です。断定はしませんが、3月は手数を増やすほど勝てる月ではない気がします。

このあたり、意外と見落とされがちです。良い施策ほど、現場の負荷が高いことがある。オードブルは売れるけど仕込みが重い。花見セットは刺さるけど包装が大変。値上げ前は動くけど問い合わせが増える。だから、売上だけで判断すると現場が壊れます。

判断基準はシンプルでいいと思っています。

需要の読みとして筋が通っているか
空間として支えられるか
現場が回るか

この3つが揃う施策だけ残す。それ以外は捨てる。捨てる勇気が、3月の安定につながります。

ここで、実行のための最小手順を箇条書きにします。手順は店によって変わりますが、迷った時の型として使えると思います。

  • 入口から会計までを歩き、今月の主役が一目で分かるか確認する
  • WBC・花見・値上げ前・新生活のうち、今週の主役を一つ決める
  • 主役の売場を導線上の強い位置に置き、説明文を一文に削る
  • 受け渡しや包装など、現場が詰まる工程を先に外出しする
  • 1週間で振り返り、売れた理由ではなく“買われた場所”を確認する

焼肉店をやっていた頃の僕は、売れた理由を味や企画で説明しようとしていました。でも今なら、買われた場所とタイミングを先に見ます。場所が合っていれば、売上は素直に伸びることが多い。場所がズレていれば、どんなに良い商品でも伸びない。これは痛いほど経験しました。

最後に、自分の経験込みで言うと、3月は「当てにいく」より「外さない」方が強いです。外さないためには、需要の読みをシンプルにして、空間に落として、現場が回る形にする。これが揃うと、WBCでも花見でも、値上げ前でも新生活でも、店が振り回されにくくなります。

ここから先は、各店舗の条件に合わせて細部を詰める段階です。たとえば席数や立地、客層、スタッフ人数で、最適な導線は変わる。なので、記事としてはここで線を引きますが、読者の店に置き換えるなら