

こんにちは、コトスタイルの穴澤です。
今日は、少し視点を変えて「孫子の兵法」からビジネスを考えてみたいと思います。
古代中国の兵法書『孫子』には、こんな有名な一節があります。
百戦百勝は、善の善なる者に非ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
訳すと、「戦って勝ち続けることが最高ではない。戦わずして相手を降すことこそが、最も優れた戦い方だ」となります。
この言葉、実は私たちが日々向き合っているテナント選びや店舗デザイン、出店戦略にも深く通じるものがあります。
安売りは、本当に“勝ち”なのか?
たとえば、飲食店の開業や小売業界でよく見かけるのが「価格競争」。
- 「近くの店が値下げしたから、うちも下げよう」
- 「オープン記念で破格キャンペーンをやらないと…」
一見“勝ちに行っている”ようにも見えますが、価格を下げ続ける競争に勝ったとしても、利益が残らない、スタッフが疲弊する、ブランド価値が下がる──そんなリスクが潜んでいます。
まさにこれが、「戦って勝ったけれど、失ったものも多い」状態なのです。
“戦わずして勝つ”とはどういうことか?
孫子の教えは、「戦いに乗る前に、戦いを避ける策を練るべきだ」と説いています。
これを京都でのテナント開業や店舗設計に置き換えて考えてみると、次のような視点が生まれます。
- 競合と真っ向から同じ土俵に立たず、ニッチなターゲットに特化する
- 安さではなく、空間や体験価値で選ばれる店をつくる
- 同業者が集まりすぎているエリアを避けて、独自性が生きるロケーションを選ぶ
たとえば、居酒屋経験が長いからといって、同じような居酒屋を出すのではなく、「クラフトビール専門」「おつまみ定食と昼飲み」のように新しい切り口を探す。
美容室でも、一般的なカット+カラーではなく、「猫好き専用サロン」「訪問美容」など、まだ誰も戦っていないフィールドで勝負する。
そういった戦略こそが、まさに“戦わずして勝つ”考え方だと思うのです。
店舗デザインも“戦略”の一部
テナントを決めたら、次は店舗デザインのフェーズへ。
ここでも大事なのは、“ただ内装を整える”のではなく、誰と、どんな関係を築きたいかを考えて空間を設計することです。
たとえば、京都の町家のような落ち着いた雰囲気を活かすなら、静けさや余白を大切にした設計が適していますし、通り沿いのにぎやかなビルなら、視認性や「ちょっと気になる」仕掛けが必要になります。
つまり、空間そのものがコミュニケーションであり、戦略なのです。
“勝ちパターン”ではなく、“無風地帯”を探す
ビジネスを始めるとき、「うまくいっている業態を真似る」ことは安心材料のひとつです。
ですが、競合が多すぎるところに参入しても、結局は消耗戦になってしまいます。
それよりも、誰も気づいていない場所、まだ気づかれていないニーズ、空白の価値に目を向けてみてください。
私たちコトスタイルでは、そうした出店の初期段階から、「どうすれば競わずに“選ばれるお店”をつくれるか」をお客様と一緒に考えています。
まとめ|“やるべきこと”を決める前に、“戦わない方法”を考えてみる
京都でテナントを借りて、店舗を立ち上げる。
それは簡単なことではありませんが、戦い方次第で“消耗せずに勝てる”道もあります。
その鍵は、「とりあえず始める」のではなく、始める前に“どう勝つか”を描いておくこと。
そして、その戦略が空間やサービスの細部にまで行き届いていれば、お客様はちゃんとその想いを受け取ってくれます。
最後にもう一度、この言葉を。
戦わずして勝つ──それこそが最上の勝ち方である。
これからテナントを探す方も、開業を考えている方も、「どこで・誰に・どうやって選ばれるか」から考えてみてはいかがでしょうか。
私たちは、そうした“戦わない強さ”を備えたお店づくりを、京都から応援しています。