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伝えるときに、気をつけていること──“想い”を共有するために

言葉がすれ違う前に──経営大学院で学んだ“伝え方の組み立て方”を現場で活かす

はじめに──伝えるって、思ったより難しい

「ちゃんと説明したつもりだったけど、伝わってなかった」

お店づくりの現場でも、そんな場面によく出会います。自分の中では考えが整理できていても、それをどう届けるかは別の話。相手によって、受け取り方も、心配していることも、まったく違うからです。

そして実際には、伝えなければならない相手はとても多い。不動産会社、デザイナー、工務店、その先には職人さんたち、さらにはWEBやグラフィックのデザイナー、金融機関などなど──お店づくりを進めるうえで、伝える先が多岐にわたるのが現実です。

経営大学院で学んだ「伝え方の構造」を、現場に落とし込んでみたら、思っていた以上に役に立つことが多くありました。今回はその学びを、店舗開業を考える方にも活かせるように噛み砕いてお伝えしてみたいと思います。

相手に合わせて“組み立て直す”

伝えるときに、まず意識しているのは「自分の中で整理したものを、そのまま出さない」ことです。

たとえば、はじめに「こういう物件を探しています」とお聞きしていても、いざその条件に合う物件を紹介しても、決めきれないというケースはよくあります。

実は、「本当に自分に店が持てるのか?」「今の予算でやっていけるのか?」という、物件とは別の不安が背景にあることも多いんです。

そんなとき、僕たちは「この予算感なら、これくらいの物件で実現できそう」と、まず不安を取り除くところから始めます。その上で、「では立地や広さはどうか?」「このカタチでお店のイメージが合うか?」と、順を追って整理していきます。

目的は物件を決めることではなく、安心して前に進める材料を一緒に見つけること。

言葉だけじゃなく、順番と温度も大事

「いい物件です」と言う前に、相手が気にしていることを先に取り上げる。

「駅から遠くないのがいいですよね」と先に言えば、聞く側も安心しながら次の話に耳を傾けられる。逆に、メリットばかりを先に並べても、不安が残ったままだと、頭に入ってこないことがあります。

さらに、伝えるときのトーンや温度感も意識しています。

「説得する」のではなく、一緒に考えるということを大切にしている。

そうすることで、相手との距離が近づき、相談の質も変わってきます。これは、現場で何度も体感していることです。

伝わったとき、空気がやわらぐ

あるとき、開業を検討されていた方に、別の案を提案したことがありました。

初めは少し戸惑いもあったようですが、「実は、この設備にはこういう維持費がかかるんです」「こちらの導線の方が、スタッフの負担が減りますよ」と、相手の立場を前提にした順序で丁寧に伝えると、少しずつ表情がやわらぎ、「それなら納得できます」と言っていただけました。

実はお店をつくる人って、自分の目線だけで物事を見てしまいがちなんです。たとえば、厨房の使いやすさに意識が集中してしまう。でも、それによってお客さんにとって不便だったり、スタッフにとって非効率になってしまっては本末転倒です。

逆に、お店としてこうしたいという想いも大切で、それをどう引き出すか、どう受け止めるかが、僕たちの腕の見せどころでもあります。

ここでの伝え方ひとつで、相手の捉え方が変わることもある。だからこそ、一つひとつ丁寧に向き合っています。

まとめ──伝えることで、進み方も変わっていく

お店を出すというのは、人生の中でも大きな決断です。だからこそ、不安もあれば、迷いもある。

そのなかで、誰かと話すこと、そして丁寧に伝え合うことが、確実に前に進むきっかけになってくれます。

経営大学院で学んだ「伝え方の構造」──ピラミッド・ストラクチャーや論理の三角形のようなツールは、僕にとって「考えを届けるための道具」になっています。

京都でお店をはじめようとされている方が、自分の想いや考えをうまく“届く形”にしていけるように、僕たちも引き続き寄り添っていきたいと思っています。

そしてこれは、実際に工事が進んでいく中や、お店を出した後のお客様や従業員とのコミュニケーションにも役立つ考え方です。ぜひ一度、試してみてください。