

2024年7月29日にオープンした「馳走あい田」。
前回は、京町家の物件に出会ったいきさつや、京都市の補助金制度について詳しく伺いました。「町家らしさをなるべく残したい」と希望して臨んだ改装工事はどんなものだったのでしょうか。今回は、工事の様子やオープン後の手応えについてお話をお聞きします。
——改装はどのように進めていかれたのでしょうか。
相田さん:建物の土台部分のやり直しから始まり、水回りや排水管など、設備関係は全て一新しました。実際に出来上がってみないとわからないこともあるので、工事期間中に何度か打ち合わせをしながら、壁や床の色、使用する素材といった細かい部分を決めていきましたね。
例えば、カウンターに使っている一枚板は、コトスタイルさんと一緒に材木店に足を運んで選びました。ちょうどいいサイズのものがなかなかなかったのですが、イチョウの木を通例とは逆向きに使ってもらうことで奥行きが出せました。
——客席から見える坪庭も素敵ですね。
相田さん:私もとても気に入っています。こちらからは、日常の手入れが楽なものにしてほしいとお願いしました。もとからあるシュロの木や景石を活かしつつ、灯籠を新しく設置して存在感のある庭に仕上げていただいています。どの席からもよく見えて、開放感があるとお客様からの評判もいいんですよ。
——厨房に関して何かご要望はあったのでしょうか。設備の内容は、事前にある程度決めていたとのことでしたが。
相田さん:1人で作業することを想定していたので、なるべく移動が少なくすむよう、作業動線を集約していただきました。コンロやグリルなどの配置を工夫して、手の届く範囲で作業が完結できるように考えてもらいました。
——工事前は、昔ながらの「おくどさん(かまど)」も残っていたと伺いました。
相田さん:そうなんです。出来ればそのまま使いたかったのですが、かなり古いレンガを積んだもので劣化が激しく、基礎工事の際に残念ながら崩れてしまいました。幸い、火入れ口に使われていた金具を残せたので、新設したガス台の装飾として活用しています。
——昔のものが少しでも残っていると、雰囲気が違ってきますね。町家ならではの制約は感じませんでしたか?
相田さん:補助金の申請などもあって着工までは時間がかかりましたが、始まってみると思っていた以上にスムーズに進みました。
——お店をオープンされてから間もなく1年が経とうとしていますが、使い勝手や手応えはいかがでしょうか。
相田さん:使い勝手は概ね良好です。ただ、やってみるまで気が付かなかったこともあり、コトスタイルさんに追加でお願いしたこともいくつかあります。
—— 工事後に手を加えたところを、詳しく教えていただけますか?
相田さん:まずはオープン前に収納棚を増やしてもらいました。スペースが空いていたのと「おちょこを置く場所がほしい」と思ったんです。
あとは、ドアの開閉時に音が鳴りにくいように調整してもらっています。実は最初にドアが重く感じて
調整してもらったのですが、今度は大きな音が鳴るようになってしまいまして…。ちょうどいい重さになるよう再調整してもらいました。
階段部分をふさぐように障子を設置してもらったのは、オープン後ですね。ダクトを回すと使用していない2階から熱気が伝わって、夏場に冷房が効かないことがわかったんです。壁を新設して完全にふさぐことも考えましたが、障子があるだけで劇的に改善されましたね。
今後は庭を通った先にあるトイレにも空調を設置したいと思っています。
—— 常にお店をもっとよくする工夫をしておられるのですね。
相田さん:細やかに対応してもらえて助かっています。おかげさまで「町家の雰囲気がいいね」とお客様からお褒めの言葉をいただくことが多く、大手メディアの取材を受けることもありました。最近は前職からのお客様だけではなく、地元の方のご利用も増えています。
独立前に想像していた以上のお店をつくることができ、コトスタイルさんには感謝しています。かつて私がそうしてもらったように、料理人の後輩たちにもコトスタイルさんを紹介したいです。
—— ぜひ、お待ちしています!
相田さん、本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!
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「馳走 あい田」様
所在地: 〒604-0093 京都府京都市中京区弁財天町294
施工事例▶︎▶︎▶︎