

地下鉄丸太町駅から徒歩4分ほど。古い街並みが残る一角に、京料理店「馳走あい田」はあります。
店主は京町家の宿「八坂ゆとね」内の料亭で料理長を務めるなど、京料理一筋に腕を磨いた相田修作さん。風情ある京町家の空間は「物件を探し始めたときは想定していなかった」といいます。独立を果たすまでの道のりは、どのようなものだったのでしょうか。
前編・後編の2回に分けてご紹介します。
——こちらは京町家ならではの趣のある空間ですが、最初から京町家を探しておられたのですか?
相田さん:いえ、物件を探し始めた当初は町家は考えていなかったんですよ。エリアにはこだわらず、予算内の家賃や坪数の条件が合うところを中心に探すつもりでした。マンションの1階テナントなど、水回りや設備が整っているところが開業しやすいだろうと考えていたんです。
——物件探しはいつから始められたのでしょうか。
相田さん:前職の「八坂ゆとね」に勤めて5年目くらいからですね。3年契約を更新していく形態でしたので、6年働いて独立しようと決めていました。
私の前の料理長が独立する際にコトスタイルさんにお願いしていて、詳しく話を聞いていたので、自分も独立するならぜひにと思い、紹介してもらったのがお付き合いの始まりでした。
——そうだったのですね。どのような経緯でこの物件に巡り合われたのでしょうか?
相田さん:コトスタイルさんも含め、不動産会社を数社当たっていて、そのうちの1社から紹介してもらいました。希望するお店の規模やオープン時期を伝えたら、「ちょうど空きが出ました」とまだ一般に公開されていなかった物件を見せてもらえたんです。
同じくらいの家賃の京町家を2棟見せていただいたのですが、1軒目は予想よりもかなり広くて「ちょっと違うな」と。2軒目に案内してもらったのがこの物件で、ひと目で気に入りました。今の内装からは考えられないくらいボロボロでしたが、坪庭の様子や建物の雰囲気を見ると「これならいける」と自分が店に立つイメージができたんです。駅から近いことも魅力でした。
他のところに決まってほしくないと思い、即決しました。
——当初の想定を超える、運命的な出会いがあったのですね!
相田さん:そうなんです。最初は「空間や立地にこだわりすぎず、料理だけで勝負しよう」と意気込んでいたのですが、この物件なら料理と空間の相乗効果が期待できると考えました。ここならお客様に「京都らしさ」をより楽しんでいただけるお店になると思えたんです。
——京町家は市場に出回る前に契約が決まることが多く、希望していてもなかなか見つからないそうですが、すごいご縁ですね。ちなみに、先ほど「ボロボロだった」とおっしゃったのですが、古い建物の改装を進めるのは大変だったのではないでしょうか。
相田さん:1年ほど空き家だったそうで、坪庭の草木が伸び放題でしたし、照明もつかない状態。さらに、水回りや排水管、床のつくり替えも必要でした。
当然、マンションの1階テナントよりも改装費がかかるのですが、よく調べてみるとここが「指定京町家」であることがわかりました。これは京都市の条例に基づく制度で、申請すれば改装費の一部に補助金が使えるんです。
申請に施工図面が必要とのことだったので、コトスタイルさんにお願いして手続きを進めてもらいました。コトスタイルさんにとっても初めてのケースだったそうですが、無事に申請が受理されてとても助かりました。
——通常の物件よりも改装費がかかる中で、補助金はありがたい存在ですね。改装工事の際は、どのような要望を出されたのでしょうか。
相田さん:この建物の良さをできるだけ残したいとお伝えしました。あと、坪庭がよく見えるようにしたかったです。料理に必要な厨房設備がある程度決まっていたので、それらがきれいに収まるようにお願いしました。
デザイン図面を最初に見せていただいた時は、それまで漠然と考えていたことが具体的なカタチになっていて感動しましたね。想像通り、いえ、それ以上でした。
—— 京町家の良さを活かしたお店づくりがここから始まるのですね。
後編では、改装工事についてさらに詳しくお聞きしていきます。
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「馳走 あい田」様
所在地: 〒604-0093 京都府京都市中京区弁財天町294
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