

2026年オープン予定の「蔵代醗彩」。前編では、飲食店を開業するに至った経緯や、物件探しの苦労についてお話を伺いました。後編では、町家を活かしたリノベーションのこだわりと、京都ならではの素材選びについて詳しく聞いていきます。
――京町家の風情を生かすこだわりの素材選び
――リノベーションはどのように進めていかれたのでしょうか。
徳永さん:1階のカウンター席、奥の半個室、そして2階のテーブル席と、狭さを感じさせることなく、3つの異なる空間を楽しんでもらいたいと考えました。
古い物件で、ボロボロになっていたところもあったのですが、せっかくの京町家を綺麗にしすぎては面白くない。この建物らしい風情を残したいとお伝えして、コトスタイルさんにデザインを提案していただきました。
――天井の梁や土壁の風合いが素敵ですよね。
徳永さん:ありがとうございます。傷みがひどいところは土壁を塗り直しつつ、比較的良い状態だった部分はそれ以上崩れないように保護して残しました。2階の天井も、古いものを生かしています。
――これまでは京都以外でお店の立ち上げに関わってこられたとのことでしたが、いつもとやり方が違った点はありましたか?
徳永さん:そうですね。これまでは、工事前に設計図面やパース、素材サンプルを見て、営業後の動線や席数を想定してから内容を決定し、それからリノベーションが始まるという流れでした。ただ、今回はやってみないとわからないことも多く、工事を進めながら素材の選定や細かな調整を重ねていきました。工事期間も、コトスタイルさんとはかなり密にやり取りしましたね。
――とくにこだわった点はどこでしょうか。
徳永さん:素材選びでしょうか。会社の歴史につながる味噌を扱うお店ですから、単に「カッコいい」「オシャレ」だけではなく、歴史や作り手の想いがあるものを配置したかったんです。コトスタイルさんに地元のお店や職人さんを教えていただけたおかげで、良いものがそろいました。
――とくに気に入っているものがあれば教えてください。
徳永さん:1階奥の半個室を仕切る建具は、コトスタイルさんに紹介していただいた京都の古建具屋で一緒に選んだものです。2階を上ってすぐの照明は、祇園で創業100年以上の歴史を持つ三浦照明という会社にお願いしたもので、良質な杉材の骨組みをあえて細く見せ和紙で包む「豆腐貼り」という素晴らしい技法で仕上げていただきました。
そうそう、今お話ししている部屋から見える庭も、ぜひ注目していただきたいですね。
――実は、この部屋に入った時から気になっていました!お庭に見えるのは、もしや味噌樽ですか?
徳永さん:その通りです(笑)。コトスタイルさんと庭師さんといろいろ相談していたら、「お味噌屋さんなんだし、味噌樽を置いたら」と提案してくださったんです。最初は驚いたのですが、弊社の社長に話したら「あそこだったら持ってるかな」と知り合いのツテをたどっていろんな蔵元を探してくれました。
――お庭のサイズにピッタリですよね。
徳永さん:山形の味噌蔵で使われていたものです。味噌樽は大人がすっぽり入れるほど大きなものが主流なので、このサイズは貴重ですね。職人さんの手仕事の賜物で、何十年、何百年と使い込まれていくようなものです。木樽の職人さんも減ってきている中で、よく見つかったなと思います。
――山形ですか!遠いところからわざわざ。
徳永さん:「古くてボロボロですよ」とおっしゃっていたのですが、実物が届いたらとても綺麗で風合いのあるものだったので感激しました。庭師さんも「これはいい」と上手く配置し、素敵な屋根までつけてくださって。
おかげ様で、お味噌造りがルーツの会社にふさわしい、象徴的なお庭になりました。
――開業準備でお忙しい日々だと思いますが、内装が完成した手応えはいかがでしょうか。
徳永さん:すごく良い空間ができたと思いますね。コトスタイルさんと納得がいくまで細かく打ち合わせをして、一緒に考えてもらえたことに感謝しています。京都に根付いた会社だからこその人脈をお持ちで、その土地ならではの文化や歴史あるものをご紹介いただけたのはありがたかったです。
開業後は、日本各地のお味噌の多様性や、発酵食文化の魅力を発信できるお店に育て上げていくつもりですので、末永くお付き合いいただきたいですね。
――お店のオープンを楽しみにしています!
歴史と伝統を大切にしながら、新たな発酵文化を発信していく想いが伝わってきました。徳永さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!






