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(5/6)「テナント 契約 注意点」を見落とすな!プロが解説する契約トラブルを防ぐチェックリスト

05.京都・関西特有の契約リスクと実例解説|“全国共通”では通じない、地域のリアル

契約書って、全国どこでも同じように見えるけれど、実はその中身、土地の文化や商習慣に強く影響されているってご存知でしょうか?京都で「お店を出す」となると、どうしても避けて通れないのがこの“地域性”です。特に古くからの商店街や、歴史あるエリアに店舗を構える場合は、契約書の内容以上に、人との関係性や文化的な背景が大きく関わってくることが多い。

今回のBlogでは、そんな京都・関西エリア特有の契約リスクと、実際のトラブル例をご紹介します。

【1】「景観条例」による工事の制限|“京都らしさ”が足かせになる?

京都市内で開業する際、もっとも知られていて、かつトラブルになりやすいのが景観条例の存在。

▽ 実例:看板の設置NGで集客に苦戦

京都駅近くでカフェを開業したDさんは、開業時にオシャレな外観を目指して看板デザインを依頼。
ところが、設置予定だった壁面看板が「景観を損ねる」という理由で、行政から設置NGの通達が。

Dさん:「えっ、もう看板も発注済みなのに…」

結果、集客が伸び悩み、追加でスタンド看板などを用意することに。「最初に景観条例の範囲をしっかり調べておくべきだった」と悔やんでおられました。

ポイント:京都では、契約前に「外観や看板のデザインが制限される」可能性があることを把握しておくべき。

【2】「地域コミュニティ」との関係性|契約書に書かれない“暗黙ルール”

京都の古い町家エリアや、観光地に近いゾーンでは、ときに近隣住民や地元組合との“お付き合い”が求められることも。

▽ 実例:営業内容が近隣からNGに

祇園エリアでバーを開業しようとしたEさん。物件も決まり、内装工事も進んでいた頃、町内会から「夜間営業は控えてほしい」と要請が。

Eさん:「契約上は問題ないし、風営法もクリアしてるのに…」

実はこのエリアでは、“静かで落ち着いた町並み”を維持したいという地域意識が強く、新しい店舗に対しても、営業スタイルに一定の配慮が求められていたのです。

【3】「町家物件」の特性と老朽化リスク|修繕費の“すれ違い”

町家をリノベーションして店舗にする。これは京都らしい開業スタイルのひとつですが、物件の構造や状態によっては、想定外の修繕が発生することがあります。

▽ 実例:雨漏り対応で契約トラブルに

西陣エリアで雑貨店を開いたFさん。開業半年後、雨漏りが発生。建物の構造に起因するものでしたが、契約書には「修繕義務は借主負担」と記載されており、全額自己負担で修繕することに。

Fさん:「築年数のわりにきれいだったし、まさかそこまでとは思っていなかった…」

町家は見た目がきれいでも、中身は“築100年”ということもザラです。契約書だけでなく、「建物診断」や「躯体チェック」などを入居前に行うべきだと痛感されたそうです。

【4】「居抜き物件」=ラッキーとは限らない|設備の名義や保守責任の落とし穴

コストを抑えて開業できる“居抜き物件”。しかし、その裏には“誰がどこまで責任を持つのか”が曖昧なケースも少なくありません。

▽ 実例:冷蔵設備のトラブルで営業ストップ

大阪・天満で開業したGさんは、居抜きの飲食店を引き継いでオープン。ところが開店2週間で冷蔵庫が故障。修理を依頼したものの、設備の所有者が不明で、保証もきかず、丸ごと交換に。

Gさん:「内装が残ってる=設備も使えると思ってた」

“居抜き”とは、「内装・設備が残っている状態」であって、その機器の状態や保証の有無、名義変更の有無までは保証されません。特に電気・ガス・水道周りは、一つのトラブルで営業停止に直結するため、契約前に要確認です。

【5】「保証金(敷金)」の返還ルールの地域差

関西では「敷引き文化」が根強く、退去時に保証金が満額戻ってこない契約が一般的です。

▽ 実例:思ったより戻らない…10年営業した後の驚き

京都市内で10年営業した洋菓子店のHさん。退去時、原状回復も終え、「そろそろ保証金戻ってくるかな」と思っていたところ…

管理会社:「もともと敷引き80万円と記載がありますので、差し引き20万円のご返金になります」

Hさん:「えっ? そんなの忘れてたし、10年やってたのに…」

「敷引き」は、保証金の一部を最初から返還しない契約で、関東ではあまり見かけないですが、関西ではいまだにスタンダード。「保証金は“預けている”お金だから、戻ってくるはず」と思っていたら、思わぬ落とし穴になります。

【まとめ】京都・関西での契約は、“その土地のルール”を知ることから

ここまでご紹介した事例は、どれも「契約書には書いてあった」「でも知らなかった」という、“形式”と“実態”のギャップから生まれたものばかりです。

京都や関西では、

  • 地域の慣習
  • 景観条例
  • 町家や居抜きの特性
  • 保証金のルール

といった、地域性に根ざしたリスクが少なくありません。でも裏を返せば、これらを事前に理解し、契約前にきちんと確認しておけば、防げるトラブルばかりなんです。

次の回では、その“確認ポイント”をチェックリスト形式でご紹介します。契約直前に見返せるように、実務的な項目を一つずつ並べていきますね。