

烏丸御池駅から徒歩10分ほどの静かな通り沿いに「Bakery Neru!」がオープンしました。
店主の石田真也さんは、公務員として20年以上勤務した後、パン職人に転身した異色の経歴の持ち主。イチからパンづくりを学び、京都市内のベーカリーでの勤務を経て、念願だった自分のお店をオープンされました。
安定した職を離れ、未知の世界へと踏み出した石田さんの奮闘はどのようなものだったのでしょうか。開業までの道のりをじっくりと伺いました。
――石田さんは、以前は公務員だったそうですね。
石田さん:はい。京都市役所で税金や福祉、介護関係など様々な業務を経験しましたが、「もっと他の仕事もやってみたい」と思うように。何かできることはないかと考えていたときに、たまたま家にあったパン作りのキットを使ってみたら、面白くてすっかり魅了されました。最終的には、パンを勉強するために転職することになりました。
――パン作りをどのように学んでこられたのでしょうか。
石田さん:まずは通信制の専門学校を受講し、製菓衛生士の資格を取りました。
求人情報を検索すると、ある大手ベーカリーが市内に新規出店するというので、2年ほど働きました。その後、以前から美味しくて好きだった二条の「コネルヤ」の募集を見つけ、4年半ほど勤めました。
2つのお店でパンの技術やお店の運営について学んだのは貴重な体験でしたが、「やるからには好きなパンを好きに作りたい」と考えるようになりました。そこで、コネルヤのオーナーや独立した先輩方からアドバイスをもらいながら、独立に向けて物件を探しはじめました。
――物件はどのような条件で探しておられたのでしょうか。
石田さん:先輩からの「店は自宅からすぐに行ける場所にしておいたほうがいい」というアドバイスに従って、家から通いやすそうなエリアをメインに探していました。予算に合う家賃と適度な広さ、人通りがある場所、競合店が少ないところなどが希望条件でした。半年ほど探しましたが、どこも一長一短で契約には至らなかったです。
――ピッタリの物件には、なかなか出会えないものなのですね。
石田さん:実は、コトスタイルさんにお会いする前に、気になる物件が1つありました。レイアウトを考えるために内装会社を紹介してもらったのですが、下見の段階でその会社から図面と見積を提示され、少し強引な印象を受けたんです。しかも、こちらの予算の倍にあたる金額を提案してこられて、交渉するにも明細がわからない状態。結局、その話はお断りしました。
――予算の倍額とは驚きです。振り出しに戻ってしまったのですね。
石田さん:そうなんです。そこでようやくコトスタイルさんを思い出しました。コトスタイルさんのホームページは、京都のおでかけ情報などを検索するとなぜかよくヒットするんです(笑)。物件探しから相談できるとのことだったので、思い切って問い合わせてみました。
――コトスタイルにご相談いただいて仕切り直しとなったわけですが、どのように進めていかれたのでしょうか。
石田さん:希望条件をお伝えして、いくつか物件を紹介してもらいました。コトスタイルさんと一緒に下見をしたときに「ここは設備の搬入が大変かもしれません」「ご希望の広さではないかもしれません」といったマイナス面もしっかり伝えてくださったのが印象に残っています。信頼できると思いましたね。
――この場所にした決め手を教えていただけますか。
石田さん:正方形に近い間取りで厨房機器の配置がしやすいことや、広さがちょうどよかったことです。自宅までの距離も理想的でした。ただ、大家さんが上の階に住んでおられるので、「早朝からの作業が必要なパン屋という業種はNGかもしれない」と心配でした。コトスタイルさんに確認してもらったところ、むしろ歓迎してもらえたのはうれしかったです。
実は、当初は家賃が予算オーバーでした。ですが、元は事務所だった場所で改装費がかかることから、コトスタイルさんが交渉を重ねてくださり、予算内の家賃に収めてもらえることになりました。
――条件に合わないと思っても、交渉次第で理想に近づくことがあるのですね。
後編では、リフォームについて詳しくお伺いしていきます。