

左官さんの仕事に、コトスタイルの“現場力”が見える。
亀甲屋町で進んでいる町家改装の現場へ行ってきました。担当はデザイナーのナガサワさん。今日は現場で左官屋さんが壁の仕上げ作業をされているとのことで、どんな雰囲気かを見に行きました。
左官屋さんの仕事に漂う信頼感
現場に入ると、壁の仕上げを進める左官屋さんの姿がありました。コテを滑らせるたびに、少しずつ表情を変えていく壁。その手元を見ているだけで、長年積み上げてきた経験と勘が伝わってきます。
左官屋さんとはもう10年以上のお付き合いになります。仕事中は寡黙ですが、現場にいるだけで空気が引き締まる方です。「だいぶ仕上がってきましたね」と声をかけると、「まだ半分くらいですよ。でも壁が見えてくるとやっぱり楽しいですね」と笑顔で返ってきました。こうして現場で直接言葉を交わせるのが、やっぱりうれしい瞬間です。

カウンターと左官作業の様子

カウンター正面と奥のタイル壁
モールテックスのカウンターと、悩み抜く“色”の選定
今回の改装では、素材選びにもかなりこだわっています。目を引くのがモールテックスで仕上げたカウンター。金属のようにシャープなのに、土や木と並ぶと不思議とやわらかい印象になります。
床は墨モルタル仕上げの予定。カウンターの下に3枚の色味サンプルが並んでいました。「どれにするか、ナガサワさんがまだ悩んでるんですよ」と左官屋さん。色の濃さを少し変えるだけで、全体の雰囲気がまるで違う。設計図では決められない部分を、こうして職人さんが現場で確かめながら進めてくれる。そうした信頼関係が、コトスタイルの現場を支えています。

床材の色味サンプル
壁の素材と手触りを両立させる工夫
今回の壁は、藁入りの土壁をベースに特殊な素材を加えた仕上げです。最初は自然の土だけでいこうという話もあったそうですが、お客様が直接触れる位置でもあるため、耐久性と手触りを両立できる方法を選んだとのこと。
「この高さやと、どうしても手が当たりますからね。せっかくきれいに仕上げても、すぐ傷むともったいない。土の雰囲気は残しつつ、表面を少し強くしてます」と左官屋さん。そう言いながら、壁を指先でなぞって感触を確かめる姿が印象的でした。
ただ仕上げるだけでなく、実際の使われ方を想定して手を動かしている。その一手間の積み重ねが、最終的な“使いやすさ”や“心地よさ”につながっていくんだと感じます。

土壁の質感(窓まわり)

差し込む光と壁の陰影
町家に残る時間と、手仕事の温度
2階に上がると、天井を支える太い梁がそのまま残されていました。年月を重ねた木の黒と、塗りたての壁の新しい色。古いものと新しいものが混ざり合う光景に、思わず見入ってしまいます。
職人さんが一つひとつの工程を大切にしてくださるからこそ、町家の“時間”がちゃんと残る。一見地味な作業の連続だけれど、それが最終的に「この空間、落ち着くね」という印象につながっていく。そういう現場の積み重ねを、これまで何度も見てきました。

梁を残した2階の様子
町家を“今”に活かすということ
京都ではいま、「町家をどう活かすか」が大きなテーマになっています。壊すのは簡単。でも、残して次につなぐには時間も手間も覚悟もいる。住宅として受け継ぐ方もいれば、飲食店として新しい命を吹き込む方もいます。
大事なのは、ただ“残す”だけで終わらせないこと。その場所がもう一度、誰かの手で動き出すようにすることです。今回の亀甲屋町の現場も、まさにそんな場所。
伝統的な建物に新しい役割を与えながら、まちにまた一つ灯りがともる。そんな瞬間を間近で見られるのは、本当にうれしいことです。

仕上がり前の入口側カウンター
店舗デザイナーを募集しています
コトスタイルでは、京都で「お店づくり」を一緒に担ってくれる店舗デザイナーを募集しています。物件探しから設計、施工の現場調整まで、オーナーさんの“想い”を形にするところまで伴走する仕事です経験の有無よりも、現場に向き合う姿勢や、お客様にまっすぐ向かえることを大切にしています。
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