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想いが届くお店には、戦略がある。

“ただつくる”から“続ける”へ。戦略と戦術の違いから考える、伝わるお店づくり

久しぶりのMBAでの学びを、おみせづくりに活かしたい。

──実践と学びをつなぐブログ、再始動です。

約3ヶ月ほど、間が空いてしまいました。
仕事がバタバタしていたのもありますが、ちょっと時間があいてしまうと「何を書こうかな」「ちゃんとまとめられるかな」なんて思って、余計に筆が止まってしまうこともありますよね。

でも、やっぱり書きたいなと思ったのは、「学び」と「実践」がつながる瞬間に、面白さや手応えを感じるからです。

今回からまた少しずつ、グロービス経営大学院での学びを通して得た視点を、日々のおみせづくりの仕事と重ねながら、僕なりに咀嚼して、ことばにしていけたらと思います。

戦略と戦術の違いを知ると、視野がひらける

まず、最初に共有したいのは「戦略と戦術の違い」です。

これは、はじめて僕自身が学んだとき、正直「何が違うんやろ?」と思ったテーマでした。でも今ならはっきりわかります。この違いを理解しているかどうかが、実はものすごく大切なんです。

お店づくりをしていると、つい戦術的な話が中心になります。内装どうする?客単価は?SNSはどう発信する?そういった話ももちろん大事です。でも、それらは「どうやってやるか」という手段であって、「どこへ向かうのか」という視点が抜け落ちてしまうと、チグハグな方向に進んでしまう。

特に共同創業する場合や、スタッフと一緒にお店をつくっていくときには、この「戦略と戦術の違い」を共有しておくことがとても重要です。意識して言葉にしないと、それぞれの見ているゴールがずれてしまいます。だからこそ、日々のコミュニケーションの中で「いま話しているのは戦略?戦術?」と立ち返るトレーニングが必要なんですね。

変化が早すぎるいま、PEST分析の目線をもつ

続いて紹介したいのが、外部環境を読み解くフレームワーク、PEST分析です。

これは、政治(Political)・経済(Economic)・社会(Social)・技術(Technological)の4つの視点で、事業に影響を与える要因を整理するものです。

とくに今、これを強調しておきたいのは、外部環境の変化が本当に早すぎるということ。
日々のニュースが、自分のお店とどう関係あるのか分かりづらい。でも、人件費の高騰や物価高、円安など、実は全部つながっていて、遠いようで目の前の問題だったりするんです。

たとえば、家賃。京都では、物件の売買価格が一気に上がりました。売買価格が上がれば、利回りを保つために家賃も上がらざるを得ない。でも、お客さんのお財布事情は、そんなに急に変わらない。サービスを劇的に変えるのも簡単じゃない。コストは普段から切り詰めている。

こういう状況で戦っていかなきゃいけない。

だからこそ、自分たちのビジネスだけを見ていると足元をすくわれてしまう。PESTの視点を持つことで、「いま起きていることの“本当の背景”」をとらえる癖が身についてくる。これは本当におすすめしたい思考習慣です。

5フォース分析で「競合」の見え方が変わる

次に、5フォース分析。

ここで面白いのは、「競合=同業」ではないということ。
飲食店なら、近くのラーメン屋やカフェが競合だと思いがち。でも、お客様にとっては、「同じ5,000円をどう使うか」という選択肢のひとつなんです。

5,000円の食事と、5,000円の映画やスパやちょっとした旅。
時間の使い方、体験の選び方のなかに、実はたくさんの「代替品」がある。

これを意識できるかどうかで、店づくりの視野がぐっと広がる気がします。

そして、ここから導かれるのが、KBF(Key Buying Factor)とKSF(Key Success Factor)という考え方。
お客様が選ぶときに重視するポイント=KBF。
そのなかで、自社が成功するために絶対に外せないポイント=KSF。

ただ、KSFを考えるときに、自社の都合や強みに目がいきがちです。でも本当は、さっきのPESTや5フォースなど、外部環境から逆算して、業界を俯瞰する目線が大事。そうすると、「こうすれば勝てる」という筋道がうっすらと見えてくる。

もちろん、それでも正解なんて簡単には出ません。でも、だからこそ「考え抜く」という姿勢が、お店づくりにも活きてくるんだと思います。

戦略をことばにする。お店を続ける力に変える。

「戦略を教えてください」なんて、普段の会話ではなかなか言いにくいですよね。

でも、開業前のヒアリングや雑談の中で、「こういうことをやりたい」「こんな人に届けたい」って想いを語ってくれる方は多い。そういうとき、その人の中にある“戦略の芽”みたいなものを感じるんです。

僕たちはそれを言葉にするお手伝いをしたいと思っています。

ただお店をつくる、ただデザインする、ただ引き渡す──それだけじゃなくて。
そのお店が長く続いて、ちゃんと伝わること。世の中の人に響くこと。
その先に「この町にこんなお店があるっていいな」「こんな景色があるっておもしろいな」と思える場所が少しずつ増えていけばいいなと、心から思ってます。

そんなお店が集まると、街の風景が少しずつ変わっていく。
僕たちは、その風景づくりを一緒にやっていくチームでありたい。

スタッフのみんなにも、それを押し付けるんじゃなくて、自然とそんな空気のなかで仕事をしてもらえたらうれしいなと思っています。

また次回も、ちょっとずつ学びと実践をつなぐような内容を綴っていきます。
お読みいただきありがとうございました!