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最低賃金引き上げと店舗経営の選択肢

業務改善助成金という“使える制度”を、いま改めて考えてみる

最近、ニュースを見ていても「賃金アップ」という言葉がちらほら出てきます。飲食業やサービス業を営む方にとっては、耳が痛い話かもしれません。というのも、賃金を上げるって、単純にお金の話ではなくて、その分の売上がないとどうにもならないという、僕たちも以前焼肉店を経営していたときから本当に感じてきたことです。飲食店の経営って、毎日の積み重ねと細かな配慮の連続で、その上で続けていくって本当にすごいことなんですよね。日々勉強させてもらっています。

実際、2025年度の最低賃金の引き上げ幅は全国平均で43円と、過去最大になる見込みです(※1)。 京都も例外ではなく、現行の1,058円から63円の増額となる1,121円が目安とされています。ニュースでも大きく報道されていましたが、まさかここまで上がるとは…という声も多く耳にします。

たとえば、2人のスタッフを1日合計10時間、週5日で50時間働いてもらっている場合、月で3万円前後の負担増。年間にすれば約36万円の人件費アップになる計算です。

じゃあどうするか。避けられないなら、前向きに向き合うしかないんですよね。 その方法のひとつとして、今回改めて紹介したいのが「業務改善助成金」す。

業務改善助成金って何?

厚生労働省が実施している助成金制度で、中小企業が従業員の賃金を引き上げることを前提に、生産性向上のための設備投資等を行うと、その費用の一部を補助してくれるという仕組みです(※2)。

しかも、この「生産性を上げて、賃金も上げよう」という考え方という内容はとても柔軟性があり、いろいろな設備投資について理由を紐づけるだけで利用ができるということも僕たちがおすすめする理由です。

特に出店前ではお客様が来るということを前提に設計デザインしているけど、実際に来られたら、「ああ、もう少しこうしておけばよかった」と思うことがたくさん出てきます。まさにこのオープン前とオープン後の“ズレ”を修正することがこの助成金の本質だと捉えています。

「ここからカウンターの外に出られたら効率的だな」「この壁がなかったら一人アルバイトを減らすこともできそう」——そんな気づきに対応するための投資、それを支援してくれる制度なんです。

補助率は最大で4/5。つまり、100万円使っても、80万円返ってくる可能性がある。これはもう、活用しない手はありません。

コトスタイルが関わったあるケース

実はこの制度、私たち自身が京都で経営していた「枯らし熟成焼肉つつい」でも活用しました。

当時は、内装のレイアウト変更、エアコン増設、厨房機器の追加、PC・タブレット導入といった内容を組み合わせ、総額およそ300万円のバリューアップを実施。そのうち、自己負担は約60万円におさえられ、240万円が補助された形です。

このとき大きかったのは、賃金引き上げの対象がアルバイトのみだったという点です。アルバイトさんの働く時間を冷静に見直してみると、時給換算の上昇分が月全体のコストに与える影響は意外と小さく、「これならいけるかもしれへんな」と判断できたんです。

たしかに、60万円の持ち出しというのは、タイミングによっては厳しいかもしれません。 でも、「60万円出すことで、300万円分の設備改善ができて、スタッフの働く環境もよくなって、結果として売上や評価に返ってくる」ならどうでしょう。

今後、賃金を引き上げなければいけない流れが来るとわかっている今こそ、「先に動く」ことが大事になってくる気がしています。

申請のハードルは?

助成金と聞くと、「書類が多そう」「むずかしそう」「そもそも対象になるのかわからない」といった不安が出てくると思います。

でもご安心ください。基本的には社労士の先生にお願いするので、手続きの負担はほとんどありません。 書類作成から窓口対応までサポートしていただけますし、もちろん見積もりや計画などは用意しないといけませんが、そこは僕たちも一緒にお手伝いさせていただきます。

もちろん、どの内容が対象になるのか、いくらまで出るのかなど、実際のところはケースバイケースです。 なので、そこは一緒に考えましょう。

「これって対象になるんかな?」というところからでいいんです。まずは、聞いてみる、考えてみる、動いてみる。そういう姿勢が経営にとって、後々効いてくると思っています。

まとめ:60万円の自己負担をどう考えるか

助成金を使って、設備投資をする。 それは「節約」というより「先行投資」です。

たとえば、厨房機器を変えることで作業効率が上がる。 空調を強化すれば、スタッフの体調管理もしやすくなるし、来店客の満足度も上がる。 タブレットを導入すれば、予約管理や注文がスムーズになる。

今の経営を切り詰めるということもとても大切。 でも一方で、必要な投資も大切です。だからこそ、こういうタイミングを逃さないようにしてほしいと考えています。

特に僕たちは、お店は完成したら終わりではなく、オープンしてからが始まりだと強く認識しています。 お店を始めて、お客様やスタッフを含めた自分たちが気づいたことをカスタムして最適化すること。 この積み重ねで、より良いお店になっていくと思っています。

もちろん、今すぐに全員が動けるわけじゃないと思います。 ただ、「こういう制度があるんやな」って、知っておくことが、後々の選択肢を増やしてくれる。

できれば、すべてのお店に知ってほしいです。 もしかしたら今後、まだまだ賃金は上昇するかもしれません。しないかもしれない。 このように外部環境の変化は予測できません。 昨年も上がったし、今年は…と思っていたところに、まさかの過去最大の引き上げ。 本当に厳しい話です。

ただ、だからこそ仕掛けるということを、ぜひ知っていただけたらという思いで、この記事を書きました。

僕自身もコトスタイル株式会社を経営しながら、日々たくさんの苦労を感じています。 でも、それでもやっぱり、自分がやりたかったことを実現している。 そしてこれからも、経営者としてしっかり成長したい。

そんな思いで、さまざまな場所に出て情報を獲得しようと必死です。 そして、よかったと思うものはみなさんへ届ける。 それが僕にとっての重要な使命のひとつだと考えています。

これからも、こういった情報をお届けしていきます。

そして最後に——

9月には財務セミナーを実施予定です。

いま、ますます「財務的な視点」を持って経営をすることが求められています。 ご興味ある方は、ぜひこちらもご覧ください。

▶︎ https://www.kotostyle.co.jp/contents/archives/42793/


※1 出典:日本経済新聞「最低賃金、全国平均43円引き上げ 過去最大」2025年7月30日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA30ACF0Q5A730C2000000/

※2 出典:厚生労働省「業務改善助成金」公式サイト https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html