

こんにちは、コトスタイルの穴澤です。
本当なら今日は名古屋のビジネススクールで講義を受けているはずだったんですけど、新幹線が途中で止まりまして…。修理のアナウンスを聞きながら1時間。結局、京都に引き返すことにしました(涙)。
せっかくなので、久しぶりにこの「オミセツクルコラム」を書いてみようと思います。今日は、お金の話。しかも、わりと基本的な内容。でもこの“基本”が実はめちゃくちゃ大事なんです。お店を開く前に「どんなメニューにするか」「どんな内装にするか」と考えるのも大事なんですが、同じくらい重要なのが“数字”。特に「固定費」と「変動費」をどう捉えるかで、経営の安定感は全然変わります。
僕自身、ビジネススクールでこの概念にしっかり向き合ったとき、「これは開業予定の人全員に知ってほしい」と思いました。なので、なるべくわかりやすく、かみ砕いて書いていきます。
そもそも「固定費」と「変動費」って何?
まず基本から整理しましょう。
固定費とは、売上に関係なく毎月かかる費用です。例を挙げると、
- 家賃
- リース料
- 正社員の人件費 など。
変動費とは、売上や業務量に応じて上下する費用。たとえば、
- 材料費(原価)
- パート・アルバイトの人件費
- 梱包・発送コスト(ECなら) などです。
考え方としてはシンプルです。
月ごとに「固定でかかる」ものは固定費、 売上に応じて「変動する」ものは変動費。
「これはどっちだ?」と迷うこともありますが、完璧に分類しようとしすぎると逆にわかりにくくなるので、ざっくりした判断でOKです。
損益分岐点とは?──どこまで売れば黒字になるのか
次に、「損益分岐点」について説明します。
これはつまり、
売上から変動費を引いた「限界利益」が、固定費を超えたタイミング=黒字になるポイント
を意味します。
式にするとこうです:
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
では、限界利益率って?
限界利益 = 売上高 − 変動費 限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高
たとえば、100万円の売上で30万円が材料費(変動費)なら、限界利益は70万円。限界利益率は70%になります。もし固定費が70万円だったら? ちょうど損益分岐点です。この計算をしておくと、「どこまで売れば黒字になるか」が数字で見えるので、日々の営業にも力が入りますよね。
個人店ならではの“固定費の重さ”をどう考えるか
さて、ここからは個店──特に京都のように物件事情が独特な場所での話。
町家や古ビルなど、雰囲気はあるけど補強や修繕が必要な物件が多い京都では、どうしても初期費用や固定費がかさみがちです。
たとえば、
- 家賃が高い(立地重視の場合)
- 設備費が嵩む(古い建物を改装する場合)
- スタッフの確保にコストがかかる(接客レベルの維持)
つまり、固定費が上がりやすい=損益分岐点も上がりやすいというわけです。
この状況で「なんとなく黒字だと思う」みたいな経営をしてしまうと、気づいたときには赤字……というリスクも。
数字は“コワい”けど、“味方”になる
数字が苦手な人ほど、「損益計算」や「固定費」「変動費」と聞くと逃げたくなるかもしれません。
でも、これは「お店の未来予測」です。きちんと向き合えば、
- どのくらいの売上が必要か?
- コストを下げる余地はどこか?
- どんなときに危機が来るのか?
が見えてきます。
そしてこれは、内装デザインや施工と同じくらい、“オミセツクル”上で大切な視点です。
コトスタイルでは、開業準備から開業後のサポートまで、「事業として成功すること」に向けて伴走しています。もし数字まわりで不安がある方は、気軽にご相談ください。一緒に“見える化”していきましょう。
固定費が高いビジネスは、天気にも左右される?
たとえば──。 京都の観光地にある小さなジェラート屋さんを想像してみてください。 毎月の家賃は30万円、冷凍設備や厨房機器のリース代が月10万円、人件費に15万円。 この時点で、もう55万円の固定費が発生しています。
じゃあ、7月と8月の売上が100万円だったとしても、9月の雨続きで売上が50万円に下がったとします。 売上が半分になったとしても、固定費はそのまま。 つまり、利益の出方が大きくブレてしまうということなんですね。
これはまさに“固定費の高さ”がもたらすリスクです。
売上が大きく伸びたときには恩恵も受けられますが、 予期せぬ売上の減少には耐えづらいという弱点もあります。だからこそ、事業計画を立てる段階で 「この売上水準を下回ったら赤字になるライン(=損益分岐点)」を 把握しておく必要があるんです。
変動費は“じわじわ効いてくる”
一方で、変動費は最初は軽く見られがちです。 「売れたら材料費がかかるのは当然でしょ?」という感じで、 原価率のコントロールを軽視してしまうケースもあります。
でも、たとえば── 100円で仕入れていたコーヒー豆が、ある日120円に値上がりしたら? 原価率は20%アップ。 しかも、売価が変わらなければ、利益はどんどん圧迫されていきます。
だからこそ、変動費についても 「仕入れの見直し」や「ロス率の改善」などを通じて、 限界利益をキープ、あるいは改善していく努力が欠かせません。
「1杯ごとの利益なんて微々たるもんでしょ」 と思われるかもしれませんが、 毎日100杯出るお店で、1杯あたり10円改善できたら、 月間で3万円、年間で36万円の利益改善につながります。
「固定費は削れない」と思い込んでいませんか?
ここでひとつ、よくある“思い込み”にも触れておきましょう。
それは── 「固定費って、削れないものでしょ?」という考え方です。もちろん、家賃やリース料、人件費は、ある程度の“覚悟”として発生するものです。 でも、たとえば以下のような方法で見直せることもあるんです。
- 家賃交渉(実績を示して交渉する)
- リースより買い切りの方が結果的に安いケースも
- 人件費の“効率化”──1人で2役できる仕組みづくり
つまり、「削れない」と思っていた固定費も、 見直しの余地があるかもしれないんです。
ケーススタディ:見直しで月15万円のコスト削減に成功
以前サポートしたカフェのお客様。 開業当初、月の固定費が70万円で、利益がほとんど出ていない状況でした。
まず着手したのは、営業時間の見直し。 夜の時間帯は売上が立ちづらいのに、スタッフ2名分の人件費がかかっていた。 そこで、
・夜営業をやめてランチ特化に
・次に、月4万円かけていたPOSレジのサブスクを見直し、
・必要最小限のシステムに切り替え。
その結果、月15万円の固定費カットに成功。 売上は同じでも利益が倍以上に改善されました。
「経営のリズム」をつかむには、数字の“癖”を見る
ここまでいろいろと話してきましたが、 一番大事なのは「経営のリズム」をつかむことです。これは、数字を日々見ていないとわかりません。たとえば── ・週末は売上が跳ねる ・雨が降ると売上が2割減る ・夜より昼の方が客単価が高いこんな“癖”が見えてくると、 どこを変えたら利益が出るのかが見えてくるようになります。
コトスタイルができること
僕たちコトスタイルは、 単にデザインや施工をするだけの会社ではありません。「お店をつくること」と「事業を育てること」は、 切っても切り離せないものだと思っているからです。だからこそ、事業計画や数字の部分でも、 相談できるパートナーでありたいと思っています。
「こういう場合、どう考えたらいいの?」 「利益率を改善したいんだけど…」
そんなときは、ぜひ気軽にご相談ください。
数字のことは苦手…という方にこそ、
「分かりやすく」「楽しく」一緒に考えられる方法をお伝えできればと思っています。
まとめ:「売上」より「利益」に目を向ける
最後にもう一度。
「売上が伸びてるから大丈夫」──それ、本当ですか?
利益が出てなければ、どんなに売れていても続かない。 だからこそ、
- 「利益構造」を早い段階から理解しておくこと。
- 固定費と変動費を分けて考える。
- 損益分岐点を知っておく。
- 数字の癖を把握して、改善するポイントを見つける。
これが、長く続くお店をつくるための、大事な基礎なんです。
そしてそのプロセスを、 一緒に楽しめる存在でありたい── それがコトスタイルの願いです。







