

2024年11月にオープンした「Bakery Neru!」。
前編では、店主の石田さんがパン職人に転身するまでのいきさつや、物件探しの苦労についてお話を伺いました。後編では、リノベーションについて詳しく聞いていきます。
――改装にあたって、どんな希望を出されたのでしょうか。
石田さん:一番気を使ったのは厨房機器の配置ですね。オーブンとホイロ(生地を発酵させるときに用いる保温装置)、大型の冷蔵庫、パイ生地を作るためのローラーといった機器をどう配置するかを重視しました。
購入する機器はある程度決めていたので、メーカーに問い合わせて図面を取り寄せ、コトスタイルさんに大きさや重さを伝えて導入の方法を検討してもらいました。コトスタイルさんとメーカー担当者さん、私の3者で打ち合わせをし、作業がしやすい導線とベストな配置を考えましたね。
それから、厨房の床は掃除しやすいものにしてほしいとお願いしたところ、継ぎ目のない塗り床になりました。
――パンを焼く環境を整えることに尽力されたのですね。コトスタイルからはどんな提案があったのでしょうか。
石田さん:厨房の排水設備では、2階の住居部分と共通になっていたので、厨房に新たな排水管を新設して完全に分離しようということになりました。こうすることで、詰まった時などに原因の特定が素早くでき、メンテナンスがしやすくなります。
――なるほど。売場については、何か希望を出されましたか?
石田さん:売場はもとはガレージだったスペースを活用しているんですよ。売場から厨房がよく見えるようにしてほしいとお願いしました。
――たしかに、売場から厨房の奥まで見通しがいいですね!
石田さん:衛生的に問題がないよう、最低限の仕切りはしていますが、お客様に焼き立てが出来上がるところを見ていただきたかったのでこのような形にしてもらいました。
ーー入口がガラス張りで、通りからもよく見えますね。ガラスに描かれたイラストやメニューの案内もかわいくて親しみが持てます。
石田さん:イラストは私の発案ではなく、知り合いのイラストレーターさんが「描きたい」と言ってくれました。前職のコネルヤでも描いておられる方なんですよ。
――お店に入る時に気になっていたのですが、入口に敷石のようなものが埋め込んでありましたよね。元からあったものなのですか?
石田さん:床は以前からのものをほぼそのまま使っています。石が埋め込んであるのは、この地域に川があった名残なんですよ。
――えっ川が?
石田さん:はい。その昔、お店の前の西洞院通は川が流れていて染物が盛んだったそうです。その川が埋め立てられる際に、川の飛び石を移設してここに埋めたと聞いています。
本来なら床を削って完全にフラットな状態にしたほうが使い勝手がいいのですが、そのような歴史のある物が残っているのなら、少し不便でもこのままにしておこうかと。
ただ、お客様が歩くところに石があるとつまづく恐れがあるので、石があるほうにレジや作業台を置くことにしました。
――そんな由来があったのですね。売場は他にどんな工事をされたのでしょうか。
石田さん:なるべく最小限の工事にするイメージだったので、照明や、店内壁の塗装くらいでしょうか。陳列棚やカウンターは移動できるものを作ってもらいました。厨房機器を入れ替えたり、メンテナンスが必要になったりした際は入口から搬入出することになるので、動かせる家具を提案してくださったんです。厨房機器の多くは1台につき1トンを超える重量があるため、今後の搬入出を見据えたご提案は助かりました。
――オープンから半年ほど経ちましたが、手応えはいかがですか。
石田さん:地域の方々はパン屋さんが出来たことをすごく喜んでくださっていますし、近隣のホテルにショップカードを置いてもらっているおかげで、最近は海外のお客様も増えています。
パンを作るのは本当に楽しいですが、お店を経営することの大変さも日々実感しています。パンは季節によって売上が大きく変動するので、1年を通した動きを見ながら新しい商品もどんどん出していきたいですね。
ーー最後に、コトスタイルに依頼した感想を教えてください。
石田さん:一言で言えば「安心して任せられる」ということですね。物件探しから改装工事、オープン後のフォローまで、まさに二人三脚で支えてもらっています。
実は先日、明け方に電気が付かなくなるというトラブルがあったのですが、電話したらすぐに職人さんを手配してくれました。おかげで、無事にその日も時間通りにお店を開けることができました。困ったことがあれば、すぐに相談できるのもありがたいことです。
お店をしっかり軌道に乗せて、長くお付き合いしていきたいですね。
ーー「やりたいこと」を見つけて一歩ずつ着実に歩んでこられた石田さん。穏やかなお人柄と、パン作りにかける熱意を感じられる取材でした。地域に愛されるパン屋さんとして、これからますます人気が高まりそうです。
石田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!