

02.契約期間・更新条項にひそむ落とし穴|“気づいたときには遅かった”にならないために
契約書をパラパラっと見て、「あ、契約期間は3年か。まあ普通やな」とスルーしてしまった。その3年後、オーナーは突然こう言われました。
「次回更新はありませんので、退去の準備をお願いします」
えっ? なんで? 何か悪いことした?
いや、そうじゃなかったんです。ただ、契約書に「更新なし(定期借家契約)」と書かれていた。それだけのこと。でもその“だけのこと”が、お店の命運を左右したんです。
【失敗事例】京都・左京区、物販店オーナーのケース

あるアパレル系の店舗。京都の左京区で、地元の大学生に人気のあるセレクトショップを経営していたオーナーさんがいました。3年間の契約期間を満了し、いざ更新手続きをしようとしたタイミングで管理会社からの通達──「今回は定期借家契約のため、更新はありません」と。
実は契約書には最初から「契約の更新はしないものとする」と明記されていたのですが、開業時は出店準備に追われ、そこまで読み込めていなかったとのこと。泣く泣く閉店となり、その後、似た業態の別店舗がすぐに入居。結果として「場を整えてくれた人」が退去し、「後から入った人」が恩恵を受ける構図に。
これ、じつは京都でもよくある話なんです。
「普通借家」と「定期借家」──まずはここを押さえて
店舗契約では、大きく分けて以下の2つの形式があります:

特に「定期借家契約」は、景観や街並み保全を重視する京都市内で広がりつつある契約形態です。
「イベント的に使う」「最初だけ貸したい」というオーナーのニーズにも合っているため、注意が必要です。
更新条項にひそむ罠──“自動更新”とは限らない
意外と見落とされがちなのが、「自動更新」の条件。「3年契約・自動更新」と書いてあっても、その下に小さく「貸主または借主の申し出により更新を行わない場合あり」などと書かれていると、これは“自動更新ではない”可能性もあります。
さらに、更新時に賃料や契約条件が大幅に変わるケースも。
- 更新時に保証金を積み増ししないといけない
- 更新料として家賃1ヶ月分が毎回発生する
- 造作の撤去義務が発生する(原状回復ではなく)
「知らなかった」「聞いていない」では済まされないんです。
最後に交わすのは「契約書」、最初に見るべきも「契約書」

どうしても開業準備中は、物件が決まった時点で“ゴール”に感じてしまいがちです。でも、本当はそこがスタートライン。内装や設備投資をした後に「更新できない」「契約解除される」なんてことが起きたら、その投資がまるごとパーになってしまいます。
私たちが店舗づくりをサポートする際には、「契約期間と更新条件」だけは必ず、早い段階で確認するようにしています。とくに居抜き物件の場合、「次の契約で打ち切り予定」とオーナーがすでに決めていることもありますからね。
【ここに注目】契約期間に関するチェックポイント

【まとめ】“いつまでその場所にいられるか”を想像してみる
開業って、「どう始めるか」ばかりに意識が向きがちですが、本当は「どう続けるか」「どう終わるか」も含めて考えておかないといけません。契約期間を甘く見ると、「せっかく育てた店」を手放すことにもつながりかねません。京都のように景観や地域性が重視される場所では、契約の背景にも“土地とのつながり”が色濃く影響します。
次章では、「解約条件」の中にある違約金や予告期間の問題について解説します。これも「言われてみればそうやったんか…」という落とし穴が多いポイントです。





