京都のビジネス街の中心地、四条烏丸から南東へ歩いて5分ほど、
佛光寺前に位置するのが「日本料理 観山」です。
店主で板前の八木一真さんは、料理人として老舗旅館・柊家に勤めたこともあり、
和食料理人として申し分のない経歴をお持ちです。
42歳で独立、お店を持った八木さんに
オープン前に取り組んでおいて良かったこと、大変だった点など
これからお店を持つ方の参考になりそうなお話をたくさん伺ってきました。
(2017年2月3日取材)
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オープン準備にかけた期間は20年数年!?
長年の夢を叶えた自分のお店
インタビュアー:
八木さんは、「観山」が初めての自分のお店となるのですか。
八木さん:
はい。高校を出てから24年、和食一筋でやってきて、
料理人として働きだした頃から、ずっと独立は目指していました。
数年前に知り合いの大将に「懐石料理店をオープンするから任せたい」
とお話をいただいたことがあり、とてもありがたい話ではあったのですが、
いつかは自分の店を持ちたいと思い続けていたので
もしこのタイミングでお話を請けると、年齢的に自分の店が持てなくなるかもしれない…。
それならば自分でやろうと思ったんです。
尊敬する大将に「店を任せたい」と言っていただけたことは自信にもなりましたし、
いいきっかけを作ってもらったと感謝しています。
インタビュアー:
どのくらいの準備期間を経て、お店をオープンされたのでしょうか。
八木さん:
物件探しには結局2年くらいかかりました。
不動産屋をまわり、京都市内中心部ということを決めていた以外は
特にエリアは決めずに手あたり次第、気になった物件を見て回りました。
昨年8月下旬に、元フレンチレストランだったというこの場所を見つけ、
ここなら人通りが多くて騒がしいということもありませんし、
かといって街中から遠いわけでもない、
街中から付かず離れずのほど良い距離感でいいなと思いました。
そしてリフォームに約1ヵ月半かけ、その後11月10日にオープン。
物件を見つけてからオープンまでは実質2ヶ月ちょっとかかりましたね。
インタビュアー:
リフォームする際は、どんな内装にしたいとイメージされていたのですか。
八木さん:
これまで働いてきた店は厨房にこもって料理をするスタイルで、
私はずっと裏方だったんです。なので、自分のお店を持ったら、
自分が作った料理を目の前で食べてもらいたいと思い、
座席はカウンターのみ、基本的に私が一人で厨房に立つので
座席数も多くは設けず10席にしました。
内装は和室をイメージした落ち着いた空間に、とコトスタイルさんにお願いしました。
ミーティングをする中で、レイアウトや壁紙の色など、
次回までにこれについて決めてきてくださいとリードしてもらって、
一つずつきちんと対応してもらったという印象です。
開店準備をしていたとき、二十歳の頃に「いつかお店を出すなら」と書いていたメモが出てきたんです。
いざ内装が終わってみると、L字のカウンターなど二十歳の頃に思い描いていた店舗と
ほとんど同じでびっくりしました(笑)
コトスタイルさんのお陰で、思っていた通りのお店ができたなと思っています。
インタビュアー:
思い描いていた通りのお店ができたというのは、すごいですね!
もうその頃からずっと独立したときのことを考えていらっしゃったのですね。
八木さん:
そうですね。
和食は料理を盛る器も大切ですから、骨董品も少しずつ集めていました。
実は私の実家が祇園で古美術商を営んでいるです。
ありがたいことに私は原価で購入できたので(笑)
いつか店をもったときのためにと、幕末から明治、大正時代のものなど
少しずつ気に入ったものを買いそろえていました。
インタビュアー:
それはいいですね(笑)
八木さん:
ええ(笑)
若い頃は給料が手取りで10万円という苦しい時代もありましたが(笑)
独立したときのために貯金も少しずつしていました。
そういう意味で言うと、働いている間もずっと何かしらお店を持つための
準備期間になっていたということになりますね。
まわりの人に助けてもらったからこそ今がある
人とのご縁を大切に
インタビュアー:
では、これからお店を開く方にアドバイスをお願いします。
八木さん:
自分一人の力ではここまで来ることはできませんでした。
お店をオープンすることができたのも
まわりのいろいろな方の助けやアドバイスがあったからこそ。
知り合いがたくさんいるということは
助けてくれる人がたくさんいるということ。
今回もお店を開くにあたり、困ったときには誰かが助けてくれました。
広く浅くよりは狭く深く、人付き合いをしておくといいのかなと思います。
もしかしたらお店のお客さんになってくれるかもしれないですしね(笑)
ご縁、出会いを大切にしておくことは大切だと思います。
食材の仕入れも今まで仕事をしてきた中でのお付き合いが生きています。
毎朝市場に行って魚を仕入れるのですが、店をオープンしたてのうちには
「うちで損してよそで儲ける」といって安く仕入れさせてくれることも。
業者さんがお客さんを育ててくれているという感覚だと思うのですが、
本当にありがたいことです。
うちの店が軌道に乗ったら、今度はうちが「よそで儲ける」側になるのかもしれませんしね(笑)
インタビュアー:
なるほど。持ちつ持たれつのいい関係ですね。
集客についてはどのようにお考えですか?
八木さん:
Facebookはやっていますが、そのほか宣伝広告には一切お金をかけていません。
ずっと裏方だったので私についていたお客様がいるということもありませんが、
地元出身ということで最初は知り合いが来てくれたり、
あとはおかげさまでこれも人とのご縁があって、「あまから手帖」等、
雑誌でとりあげていただき、そこからお客様が来てくださるということはあります。
お客様については、長い目で見て焦らずに、
口コミでゆっくりと増えていってくれたらいいなと考えています。
インタビュアー:
なるほど、そうなんですね。
今日はいろいろなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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修業を始めた頃から「いつかは自分のお店を」と考えメモを書き
お店が完成してみたら、当時思っていた通りのお店だったというお話が一番印象的でした。
目の前で調理の様子が見られるカウンター席、骨董品に盛られるお料理などなど、
強い意志で自分の思う通りの夢を実現されたのですね。
八木さま、どうもありがとうございました!